■読者のページ〜2004年1月〜

★海からのおたより・7

千葉県のぐるりと三方をかこむ海岸線は500キロにもなるそうです。

私たちの住む東京湾沿い、黒潮の影響を受けて造礁サンゴが見られる南房総、サーフィンのメッカ九十九里浜、寒流と暖流のぶつかる潮目・銚子、とさまざまな姿をしています。

1:千葉市の海・ハマグリ

かつて千葉の海は遠浅で海水浴場や潮干狩りでにぎわう行楽地でした。プランクトンの多い干潟の広がる千葉は昭和初期まではアサリやハマグリの有名な産地でした。「貝せんべい」や「やき蛤」、千葉駅の駅弁「はまぐり丼」は千葉の名物になっています。そのハマグリも30年ほど前に埋め立てと水の汚染でほぼ絶滅してしまいました。

ハマグリは模様の他に他の貝の殻と決して合わないので、夫婦和合の象徴とされてきました。結婚のお祝いやひなまつりのごちそうに必ずと言っていいほど登場しますね。本当ははまぐり以外でも二枚貝は他の貝とは合わないものですが、大きくてつるっとした貝殻はとてもシンプルで美しいものです。


これは「貝合わせ」の貝です。平安王朝のお姫様たちは「貝覆い」と言って神経衰弱のように伏せた貝の絵柄を合わせる遊びをしていたそうです。 だんだんと合わせやすいように貝の内側に和歌の上の句と下の句を分けて書くようになって、後にかるたに発展していったということです。

はまぐりの学名はMeretrix lusoria(メレトリクス ルソリア)と言いますが、ラテン語で「遊女」「あそびの」と言う意味になるそうです。どうしてこんな名前が付いたのでしょうか?

18世紀末のヨーロッパに持ち込まれたはまぐりはこんな絵のついた貝だったようです。西洋人の研究者には源氏物語のお姫様が遊女に見えてしまった、という鎖国時代の悲劇がそこには隠されているのです。

東京湾に面した加曽利貝塚などから出土するハマグリは「メレトリクス ルソリア」の一種類です。貝塚から出土するのは私たちが食べている大きさのものよりも小さめのものが多いようです。でも、現在デパートなどの鮮魚コーナーで売られているハマグリは3種類あります。

左:ハマグリ(M.lusoria)主に熊本産。千葉ではほとんど売っているのを見ない。内湾の塩分の薄い海の砂の中にいる。

中:シナハマグリ(M.petechialis)中国産・最近では三重県などで畜養されている。スーパーで普通 に売られているのはこの種類。

右:チョウセンハマグリ(M.lamarckii)市場では「地はま」、九十九里や鹿島灘が主な産地。殻は碁石の材料になる。1個350円くらいと高価。


どれも上品な味のだしが出ます。 写真を見てみなさん区別がつきますか?

ハマグリは粘液を出して移動するといいます。古来中国では巨大なハマグリを「蜃」と呼びました。蜃が吐き出す「気」は楼閣を描くと言われ、それを「蜃気楼」と呼んでいます。

昨年富津に潮干狩りに行ったらシナハマグリがたくさん取れました。そのうちに巨大化したシナハマグリが東京湾に蜃気楼を見せてくれるかもしれませんよ。

どんぐりつうしん編集長
谷口優子
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