■読者のページ〜2003年8月〜

★海からのおたより・4

夏休みまっただ中ですね。皆さんはこの夏どこへお出かけしましたか?谷口ファミリーはやっぱり南房総・館山です。夏の海水浴シーズンは人が多いのでビーチコーミングにはあまり向かないのですが、誰でも見つけることの出来る『ねこじゃ』のことをお話しします。

『ねこじゃ』ってなんじゃ?

『ねこじゃ』は館山のどこの海岸でも拾える『たからがい』のことです。館山市内でも地区によって『ねこじゃら』、『ねこま』、『ねこがい』などと違った呼び方をしているようです。共通 するのは“ねこ”。ねこの背中のように丸まっているからでしょうか。英語では“牛”みたいということで『cowrie』と呼ぶそうです。

館山の海岸で『ねこじゃ』を拾っていたところ、数人のおばあちゃんたちが通 りかかりました。私たちを見て、子どもの頃におはじきの代わりに『ねこじゃ』で遊んだ、と話してくれました。おままごとにも使ったそうです。「まだあるんだね〜。」と、とても懐かしそうでした。

『たからがい』のこと

『たからがい』というのは古くから人々と関わってきた貝です。縄文時代の貝塚から出土したり、貝の採れない地域では形を似せて作ったタカラガイも発見されたりと信仰の対象にされていたと考えられています。古代中国で貨幣として使われたのが『キイロダカラ』や『ハナビラダカラ』です。漢字の“貝”という文字はこの貝の背中の模様だそうです。

南太平洋のヤップ島では最近まで貝百個でお嫁さんがもらえた?という話があります。『竹取物語』のかぐや姫は『燕の巣の子安貝』を貴公子に取ってくるように、と結婚の条件を出しました。子安貝はたからがいの別 名です。むかし出産ときに妊婦さんに握らせた、ということがあったようです。


図鑑で調べると、タカラガイ類の多くは“房総半島以南に分布”すると書かれています。少しマニアックな話ですが南房総であたりまえに拾える『チャイロキヌタ』は海外のコレクターに人気があるそうです。

北限のタカラガイとして千葉産の貝は知られています。館山では高価なものはありませんが、以前見たカタログでは南アフリカの深海魚の胃の中から見つかる『サラサダカラ』は250万円の値段が付いていました。今も昔もタカラガイは魅力のある貝なのです。
タカラガイ 横5cmぐらい

むらさきのねこじゃ

『むらさきいろのねこじゃ』を持っていると幸せになる、と館山の小学校の先生に教えていただきました。むらさきのねこじゃって?皆さんぜひ探してみてください。きっと幸せになれますよ。

★夏のとっておき

その1 うみほたると星

館山桟橋の「ウミホタル観察会」で神秘的な光を見ることが出来ます。アクアラインで有名になったウミホタルですが、日本全国の太平洋側の波静かな内湾に見られるそうです。観察会は週末の日没後に開催しているので、観光案内所で情報を手に入れてください。

観察会が終わった後、桟橋から見上げた夜空があまりにも美しくて感動した思い出があります。天の川を見ていると流れ星がすーっとそれを横切っていきました。お泊まりの際はぜひ星空をごらんになってください。

その2 実りの夏

館山の付近では、お盆の頃から直売所などで新米が並び始めます。夏休みが終わる頃稲刈りも終わります。夏の新米はとっておきのおみやげです。

おみやげ、といえば毎年秋にかけて台風がやってきます。今年は気の早い台風が来ましたが、台風で海が荒れた後に海岸に出ると台風からのおみやげを拾うことが出来ます。


私は“椰子の実”を拾ったことがあります。思いがけないほどたくさんの貝や、ときには川から流されてきた生きているザリガニなどびっくりするようなものがあるはずです。でも、くれぐれも海が荒れているときは行かないでくださいね。危険ですし、そういうときは波が持って行ってしまって案外宝物は拾えません。

海にはたくさんの漂流物があります。たくさんのゴミもあります。海を歩きながらいろいろなことを感じて欲しいと思っています。


台風のあとの沖ノ島 2002.07

★館山の貝

日本で一番古い貝の図鑑である『目八譜』(1844年)にも記載があるように、江戸時代から阿房の国の沖の嶋・高ノ蔦・目良・奈古浦は貝の産地として知られていました。

サンゴの北限として有名な館山湾ですが、それと同じく暖かい海に棲むタカラガイやイモガイなども房総半島を北限としています。貝の図鑑を開くと“房総半島以南”と書かれている貝がたくさんあることに気づかれるでしょう。かつてケエ(貝)といえば房州ではアワビのことだったそうです。サザエやアワビなどは稚貝を放流しており漁業権のない一般の人は採ることが出来ません。誰でも浜辺で見つけることの出来る貝を紹介しましょう。

タカラガイのはなし

南房総ではタカラガイ類をネコジャ・ネコジャラ・ネコマ(浜田地区)・ネコガイなどといずれもネコに見立てた名前で呼んでいるようです。この貝の仲間のハナビラダカラやキイロダカラは昔中国でお金として使われていました。“貝”という字もこの貝の形から変化したものです。

年輩の方は子どもの頃、小さいネコジャ(チャイロキヌタ、メダカラなど)を使っておはじきをしたり、ままごとに使ったりして遊んだそうです。また“むらさきのネコジャを持っていると幸せになる”という言い伝えもあります。

タカラガイは北に行くほど殻が大きく育つ傾向があるそうです。図鑑に載っている例よりはるかに大きなものを時折見かけます。マニア向けに“房州独特の型のタカラガイ”とわざわざ明記して貝を売っているぐらいです。

中でも館山のほとんどの海岸で拾うことの出来るチャイロキヌタは海外の貝のコレクターに人気があって知る人ぞ知る有名な産地になっているようです。

布良あたりの貝と沖ノ島の貝では同じ種類の貝でも殻の厚さや形が微妙に違います。布良の貝は荒波のせいか全体に殻が厚くやや形がまるい印象です。北へ行くほど種類も数も減っていきます。

ボウシュウボラ

その名のとおり房州のイセエビの網にかかる大型の巻貝です。山伏の吹くホラガイは別の種類です。ヒトデやナマコを食べる肉食です。食べるとおいしい貝です。網干場で見つけられます。皮をかぶったカコボラも同じ仲間です。

アマオブネガイ

変わった形の貝で、波のかかる磯の岩の上についています。打ち上げられた貝を両手を合わせた手の中で転がすとコトコト音がするので『コトコトガイ』と呼ぶ人もいるようです。

ツメタガイのなかま

つるつるしたツメタガイは二枚貝の天敵です。海岸に打ち上げられている貝にまるい穴があいていることがありますが、この貝の仕業です。船形の漁師たちの間では『でべそ』と呼んでいるそうです。肉は食べられますが固いのであまりおすすめできません。『すなぢゃわん』という変わった形の卵を砂浜に産みます。館山湾の那古海岸から波左間あたりの波の穏やかな砂浜に良く打ち上げられています。

ヤツシロガイ

薄くてまるい大きな殻を持つ貝。船形では関東大震災の前に大きなものがたくさん漁の網にかかったことがあるといいます。肉は食べると酸っぱい味がします。そのせいかスガイと地元では呼ばれています。

いそもの(たま)

イソモノという貝はいませんが、磯で採れるスガイ・イシダタミガイ・クボガイなどをいいます。食べるとほろ苦く小さなサザエのようです。

館山では地元の貝を使った貝細工がみやげ物として昔はたくさん売られていたそうです。今ではみやげ物の貝のほとんどはフィリピンからの輸入したものになってしまいました。貝は自分たちで採って、食べて、見て、そしてアートの素材になります。ときどき海を歩きながら自分だけの宝物を探してみてはいかがでしょう。
貝細工 昔は作って売られていた

どんぐりつうしん編集長
谷口優子
e-mail:taniguchi-donguri@nifty.com