
■読者のページ〜2001年1月〜
この本を出版するにあたっての予約者(寄付者)のリストが巻末に載っていて、そこに自分の名前も載せてもらっているのだが、その中にフィリパ・ピアスさんの名前を見つけた。 ピアスさんは、私の大好きな本の一つである「トムは真夜中の庭で」の著者であるわけだが、今から5年ほどまえに、ケンブリッジ郊外のご自宅を一度お訪ねしたことがある。 その日は、朝早くロンドンを立ち、午前中はヘミングフォードグレーのマナーハウス(ルーシー・ボストンさんの家であり、『グリーン・ノウ』の舞台)を訪ね、午後からケンブリッジのピアスさんのお宅を訪ねることにしていた。 ケンブリッジに向かうタクシーの中で、今回通訳をかってでてくれたロンドン育ちの大学生Jさんと、同行の知人2名の計4名でピアスさんの本の話になったのだが、ロンドン育ちのJさんは、ピアスさんの著書についてはなにも知らなかった。 約束の時間にお宅に着くと、ピアスさんは玄関で迎えてくれ、アーディゾーニの絵の架かった書斎を抜けて、裏の庭へと案内してくれた。 一度日本で講演会に出席したこともあり、ピアスさんがどんな方なのか知っているつもりでいたが、実際にお会いしたピアスさんはとても大きな方で、背筋のピンと張った方だった。 テーブルを囲んで、用意していただいたお茶とケーキをいただきながら、ロンドンまでの飛行機の中で何度目かの「トムは真夜中の庭で」を読んだこと、そしてトムとハティが再会するところでまた泣いてしまったこと、一番好きな本が「ハヤ号セイ川をゆく」であること、そしてこの最初の本を書くことになった経緯のこと(これについては講演で使った原稿のコピーをピアスさんからいただいて来たので、いずれここで紹介したいと思う)、現在のピアスさんのお仕事のことなどのお話をして、楽しいひとときを過ごした。
帰りぎわに持参した「トムは真夜中の庭で」にサインをしていただき、この本が好きだったわねと、サイン入りの「ハヤ号セイ川をゆく」をいただき、感激のまっただ中、ピアスさんのお宅を後にした。帰りの飛行機の中でまた「トム」を読んだのは言うまでもない。 それにしても、ピアスさんの本が、イギリスではすでにクラシック扱いされていて、あまり読まれていないことには驚いてしまうのだが、昨今話題の本のことなどを考えると、もっと面白い本はたくさんあるのに、単に出会っていないだけではないのかと思ってしまうのだ。 どんな本であろうと、出会った時は新刊と同じなのであり、出会わせてあげる人がいないかぎりその本は存在しないのと同じなのだ。まだまだやるべきことはある。
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