■えるふ流読書法〜2003年8月〜
新聞の小さな記事を偶然目にしました。ロバート・マックロスキーの訃報でした。6月30日、88歳でした。
マックロスキーの作品のなかでおそらく一番知られているのが『かもさんおとおり』だと思います。日本でも都会の真中でのカルガモの子育てが注目され、今こそ、タマちゃんに話題が移ってしまいましたが、毎年子ガモをつれた様子などが新聞に載っていました。
これもまた、偶然に6月の会留府のホームページには今年ボストンからお便りをよせてくださっている大石さんから、『かもさんおとおり』の舞台、お母さんカモがチャールズ川の中州からパブリックガーデンまで行進する有名なシーンがありますが、60年以上も前のボストンの街のいまもって変わらない様子を知らせてくださいました。
柔らかい茶色を使って描かれているカモ夫婦の子育ての様子と、それを見守る人たち、マラード奥さんが子ガモを連れて大通りを歩いていくページ、押し寄せて走ってくる車に抗議するカモたちの表情、交通整理するマイケルさんと見守る街の人たち、そこにはカモたちの表情の豊かさもさることながら、ごく自然にカモに接する市民の顔、しかもこの本が1941年に出版されていることの驚きと同時に、アメリカの力を見る思いがしたものでした。(1941年は私は生まれてはいなかったのですが、私の大好きな絵本、エッツの『もりのなか』は1943年に出版されています。戦争中です。)
とても内気なロバートでしたが子どもに対しては積極的で絵や機械いじりの才能をYWCAの活動等で発揮して、その体験が絵本の処女作『レンティル(1940年)』でバイキング社の編集者に認められました。やがてボストンで壁画製作にたずさわり、その仕事場に通う時にパブリックガーデンでカモの親子に出会い、家でカモを飼いながら観察して描かれたのが『かもさんおとおり(1941年)』。この作品でアメリカの絵本に与えられる最高の賞コールデコット賞を受賞しています。
妻のペギーのこと(彼女の母親は児童文学を学んだ者には良く知られている、名ストーリーテラーのルース・ソーヤー)、その後の作品のことなどを、彼の絵本の訳者である渡辺茂男さんが、スコットアイランドの家を訪ねた時のことを『すばらしいとき〜絵本との出会い』に書いています。
絵本『海べのあさ(1952年)』の一家はまさにマックロスキー家が舞台です。はえ変わりの歯をなくしてしまうおねえさんのサリー(彼女は『サリーのこけももつみ』(1948年)でおかあさんクマについていってしまうサリーです。)、まだよちよち歩いている小さな妹ジェーン、ロバートとペギーの生活が濃紺だけで描かれています。
私が一番好きなのは『すばらしいとき(1957年)』です。水彩と墨を使ったペノブスコット湾の風景はとうてい私の育った日本海の景観にほど遠い、特に木々や植物のありさまは北国の荒々しい海岸沿いには見られないものです。でも絵本の子どもたちと一緒になってしゅるしゅると伸びてくるシダの音を聞いたり、海水に目をこらして魚をみたり、あらしのあと倒木の下から昔の人の声を聞いたり、何回見ても心を落着かせ、たっぷり楽しむことのできる絵本です。
また、ユーモアいっぱいで色がカラフルな『バード・ダウじいさん(1963年)』や挿絵がいっぱいの童話『ゆかいなホーマーくん(1943年)』等、誰が読んでも楽しい本です。1940年代のアメリカの絵本はおだやかな作風の中にもユーモアがあり、生きていくことへの肯定がきちんと描かれています。
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■『ハーモニカのめいじんレンティル』 まさきるりこ・訳 国土社
■『かもさんおとおり』 わたなべしげお・訳 福音館書店
■『海べのあさ』 石井桃子・訳 岩波書店
■『サリーのこけももつみ』 石井桃子・訳 岩波書店
■『すばらしいとき』 わたなべしげお・訳 福音館書店
■『沖釣り漁師のバード・ダウじいさん』わたなべしげお・訳 童話館出版
■『ゆかいなホーマーくん』 石井桃子・訳 岩波書店
■『すばらしいとき〜絵本との出会い』 渡辺茂男著
『かもさんおとおり』ロバート・マックロスキー/福音館書店
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