■えるふ流読書法〜2003年6月〜

今月は偶然ですが家族について考えさせられる本を多く読みました。

『ブレイブ・ストーリー上・下』 宮部みゆき
『卵の緒』           瀬尾まいこ
『風に向かっての旅』      ヘルト リング
『ソルジャー・マム』      アリス・ミード

です。(各々のあらすじなどはHPの新刊のページなどを見てください。)

これらの作品は全部家族が主題ではないけれど、 読み終わってみるとどの作品にも家族のいろいろのかたちが書かれているのに気がつきました。しかも主人公は子どもであるだけに、決して自分から家族であることを選択したわけではなく、むしろ押し付けられとまどい悩みます。

『ブレイブ・ストーリー』の主人公の亘の父親は母親と自分を捨て、家を出て他の女の人と暮らす、その女の人には子どもが生まれそうだ、そして、その事実を受け入れられない母親がガス自殺をはかるという状況設定になっています。

なんとか元の家族でありたいとする亘の願いは父親に拒否されてしまいます。父親は自分の人生を生きたいと言うのです。亘は当然父親を許せません。この本の中でもう1人重要な役割を果 たす芦川は母親の不倫から父親に母親と妹を殺され、しかたなく独身の叔母がひきとりました。ワタル とミツルはそんな運命を変えようと幻界を旅するという話です。その幻界には魔法と剣、神々が満ちあふれていてワタル=亘にはいろいろの仲間が手助けをしてくれますが、ミツル=芦川は他者を拒み1人で戦うのでした。

作者は『ハリーポッター』のように子ども達を引き付ける物語を書きたかったと何かに書いていた(記憶違いかも!)けれど、両親は死んでしまって今の居場所がなくとも、将来の居場所が確約されていて自分と向き合う必要のないハリーポッターの魔法の世界は楽しさと娯楽に満ちあふれているだけで、比べることは所詮無理、亘の世界は重く、暗く、運命を変えることもできない、けれど世界はそれだけでないことを作者は示しています。

このことは『風に向かっての旅』でも同じかもしれません。ベルントは両親がなくカルラおばさんとウィーンに向かう途中、汽車が動かないため一時滞在する小さな町で起こったことが書かれています。時代は第2次世界大戦の直後の混乱期、善も悪もゴチャゴチャの時代で大人は生きていくために自分の身だけを守るのに必死です。

その町で正体不明だけれどすてきな(本文中のまま)マイヤーさんという男の人に惹かれていきます。マイヤーさんもベルントを気にかけてくれるのですが、それには下心があって悪いことの手先に使われます。けれども、子どものベルントはそれでもいい、自分の事を認めてくれる大人を渇望します。

戦争だけではない、偶然生まれ落ちてきたということだけで、自分の意志が認められない子ども、でもそんな子ども時代にも自分の生きる世界はある、それは血の繋がりとか、親子とかだけではないことを2人とも言っているのだと思います。



『ブレイブ・ストーリー』
上・下
宮部みゆき
角川書店

『卵の緒』
瀬尾まいこ
マガジンハウス

『風に向かっての旅』
ヘルト リング
偕成社

『ソルジャー・マム』
アリス・ミード
さ・え・ら書房

《来月に続く》