■えるふ流読書法〜2003年2月〜

ローズマリー・サトクリフ(1920〜1992)はイギリスの子ども向け歴史小説の第一人者といわれています。

私がサトクリフに興味をもったのは『指輪物語』と関係の深い、イギリスやケルトや北欧の地の物語である叙事詩『ベーオウルフ』『アビノギオン』や『アーサー王伝説』を題材に物語を書いている、ということがありました。

それ以前に読んでいた岩波書店から出版されている、いわゆるブリテンの3部作(いまは『辺境のオオカミ』がはいって4部作)や『太陽の戦士』の骨太な物語も好きな本でした。

『太陽の戦士』は青銅器から 鉄器に移行する時代が背景ですが、あとのほとんどはブリテン島(イギリス)がローマの侵入を受け、やがてローマ軍の撤退のあとの時代が背景になっています。

青年(兵士)が理想と忠誠心、そして、大人になっていくことの試練と、それを乗り越えていく様子が描かれていて、それは他民族に侵略され、その撤退のあとに残ったもの、もちろん城壁や道、港などの建造物などもありますが、ローマ人とブリテン人の間の子どもなど、ああ!イギリスという国はこうやってできたのだと、それだけに日本の子どもにはちょっとわかりにくい作品かもしれないなどと感じたものでした。

これがイギリスの子ども達の歴史小説なら、日本の子ども達が読む歴史小説は?残念ながらなかなか見つけることができません。

近年どうしたことか、原書房、ほるぷ出版、小峰書店、評論社とたくさんの本が翻訳されるようになりました。もっとも彼女は30册以上の小説と再話があるとのことです。その中の伝説や叙事詩をベースにした作品にはとても興味があります。

『ベーオウルフ』は古いイギリスの叙事詩といわれるものがベースに(原書房刊・井辻朱美訳)また、ケルトの叙事詩『ゴドディン』をベースに従者である少年の半生を描き、この物語を吟唱詩人アネイリンに語らせる『アネイリンの歌』(小峰書店刊・本間裕子訳)ローマ軍にたちむかったケルトの女王ブーディカの物語『闇の女王にささげる歌』(評論社・乾侑美子訳)は読みながらこの女王ブーディカをたびたびサトクリフと重ねあわせました。

それはサトクリフの自伝『思い出の青い丘』を読んだからかもしれません。

幼い時に患った関節炎で生涯を車椅子で生活していて、そして実らなかった大恋愛、画家になりたかったというからかもしれないが、ものを見る目の確かさ、すぐれた描写 力。

そして、理想と挫折は苦悩しながらその中で精一杯生きていく、歴史のひとコマでしかない人々の生と死を描ききっていると感じます。



『ベーオウルフ』
妖怪と竜と英雄の物語
ローズマリ・サトクリフ作
井辻朱実 訳
原書房

『アネイリンの歌』
ケルトの戦の物語
ローズマリ・サトクリフ作
本間裕子 訳
小峰書店

『闇の女王にささげる歌』

ローズマリ・サトクリフ作
乾侑美子 訳
評論社