| ■えるふ流読書法〜2001年9月〜 この頃はずいぶん少なくなりましたが、時々父親らしき人が来て偉人の伝記がないかと訊ねられることがあります。不思議とタイプが決まっています。年令的には40代以後、きちんとしたいかにもある程度の社会的地位 のありそうな人です。そして子どものことを聞いてみるとほとんどが男の子なのです。子どもに対しての期待でしょうか?それとも心配でしょうか?今時偉人伝でもないでしょうが、それしか思い浮かばないのかもしれません。 一方、小学校3・4年生位の子どもがこの種の本を好むことも事実です。残念ながら伝記でこの位 の子どもが読むお薦め本はほとんどありません。人の一生はそれ程複雑で、幼い子どもに理解できるようなものでないから、どうしても客観的に大きく人間としてとらえ、それを子どもに伝わりやすく書くことは至難の技なので、孫引きの本が多く、良い書き手がいないのも大きな原因のひとつです。 ほとんどお薦めする本がなくちょっと困ってしまう状態で“現代はあまり無理をしてそれらの本を読ませなくとも、良い創作などがたくさんあるのでいかがでか?”と言ってはみるものの、自分ではこれでは答えになっていないと思ったりします。 大人になっても人の生き方には関心があります。いや、大人だからこそ関心があるのかもしれません。自分では思ってもみない、想像してもみない状況の中で暮している人がいる。そして、その生き方に深い感銘を受ける、そんなことを思うようになるのはいつ頃からでしょうか。うんと幼い頃は人のことではなくて、自分がどうするか、自分自身が本の中であれ現実の中であれ同化して、本の中に入って一緒に遊んだり、冒険したり、楽しんだりします。 けれど、いわゆる思春期になると自分以外の人がどんな暮らしをしていて、何を思っているのかが気になります。自分もそんな人になりたい、もしかしたらなれるかもしれないという夢を描いてもみます。そのことが生きていることのバネになることも多くあります。 もっと大人になると自分では到底そんな人にはなれるわけはないという現実を客観的に知るわけなのですが、それでも人の生き方には深い関心があり、それはそのことを通 じて新しい自分の可能性を探ろうとする人間の本質的な生への欲求があるのではないかと思われます。死は突然に訪れるものでしょうから、人はほんとに死ぬ 寸前まで生きていく道をまさぐっているのかもしれません。 エドワ−ド・ア−ディゾ−ニ、1900年生まれ、イギリスの画家、『チムとゆうかんなせんちょうさん』などの絵本、ファージョンなどのお話に挿絵をつけた絵本作家、イギリス人らしいウィットに富んだ絵本は私の大好きな作品ですが、その人となりはあまり知りませんでした。この夏何度か『友へのスケッチ−ジュディ・ティラ−編/阿部公子訳 こぐま社』を読み返して楽しみました。 この本は先月新刊で紹介したようにアーディゾーニが1935年から1968年まで子ども、孫、友人その他に出した数々の手紙がもとになつて編集されていて、彼自身の自画像もひんぱんに登場していて、とてもユーモラスな(これはイタリア人だった父親ゆずりかな?)、それでいてシックな(これはフランス人の母親ゆずり?)内容で一種の自伝のような本と思えるのですが、ちょっとした小説を読んでいるような趣きでした。 いじめられっ子だったこと、母親ゆずりの絵の才能、でも有能なビジネスマンの父親からは絵は男子一生の仕事ではないといわれ、ビジネススクールに学び勤めても絵を描くことを止めなかったこと、美術学校の夜学に通い、友人が彼の才能を評価してくれて世に知られるようになっていくこと、1936年に5才の息子のために「チム」が描かれ、従軍画家、挿絵画家として(主として子どもの本の挿絵)活躍したことなどが残された手紙の中からうかがい知ることができるのです。 初期の頃の自由だけれど少々荒いタッチ、1950年頃からのアミ線を使って陰影をだし、それが絵の心理描写 までを表現していることのおもしろさ、水彩画の透明な深みのある空や海の色彩 、でも1960年頃からは絵の線が続かない、なんとなく絵に力がなく、ああ体力がなくなってきたのだなぁと感じられます。
『しろくまちゃんのほっとけーき』も幼い子どもにとっての食べることの楽しさがあふれている絵本です。この本の“ぽたあん”“どろどろ”“やけたかな”“まあだまだ”などの言葉のリズムが面 白く、子どもはごっこ遊びをしながら同じ事を言っています。 夏、長野を通りました。電車の窓から見えるりんごの木には赤いりんごがたわわに実っていました。私の育った新潟はすぐ隣の県なのに、雪が多いのでりんごの木はありません。ヨーロッパなどのキリスト教国ではりんごは生命そのもの、そのりんごを育てる子どもの一年が描かれている小型の美しい絵本『りんごのき』また、オバケりんごができて困ってしまった男の人の話、でも、そのオバケりんごのお陰で泥棒を退治してしまう『おばけりんご』という愉快な絵本があります。 美味しそうなパンの出てくる本を紹介しましょう。一つは『ジャムつきパンとフランシス』いくら好きなパンでもいつもいつもはたくさん!でも、そうなってしまったのはへそ曲がりのフランシスのせいなのです。このシリーズのフランシスの両親は簡単に子どもを甘やかして妥協しません。でも、フランシスに愛情を注いでいるのはお弁当や毎日の食卓を見ると分かります。 『からすのパンやさん』や『つるばら村のパン屋さん』にも美味しそうなパンがたくさん出てきます。『山んば山のモッコたち』は食べ物だけでなくお酒まで出てきて、飲んだら=読んだら夏の疲れなんか吹っ飛んできっと元気になれるでしょう。夏の始めに作った木イチゴのお酒であなたに乾杯!
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