●ロンドン便り〜2002年7月〜
今月はイギリスの医療制度とスウェーデンの医療と社会保障についての紹介です。
まずはイギリスの国民保険制度のNHSについて。
前にも紹介したようにNHSは6ヶ月以上の滞在者とその予定者は国籍や職業に関係なく、すべての人が加入することができます。これは1948年に発足以来、国民の税金の約4割により国営されています。
最初にクリニックに登録するときにNHSの申し込み用紙に記入しカードの番号をコンピューターに登録するという仕組みでこの後に担当の医師が決まります。
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NHSでは一般外来や他の基本的な診察と治療が受けられ、担当の医師が専門医の診察が必要と判断した時はすぐに大学病院の予約をしてくれます。
NHS加入者は医師の診察が国の負担のため自己負担はなく、18歳以下の子供や定年者や失業者は薬代と歯医者にかかる費用も無料になります。(クリニックではベビークリニック、喘息、糖尿病などの教室も開いていて、毎週土曜日の午前が救急)このNHS利用者だけでなく、誰でも利用できるのがNHSダイレクトの無料ヘルプライン。
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1999年に開設されて以来、24時間いつでも医師のアドバイスが受けられ日本語の通
訳も頼むことができます。それでも医師の往診が必要な人はSOSドクターズシステムを利用することになります。ロンドン市内なら24時間体制をとっているので電話をすると1時間以内に医師が往診に来てくれて必要に応じて救急車や入院の手配をしてくれます。診察、薬代などすべて込みで約1万円なのでプライベートクリニックに行くより安いとこちらの人には言われているようです。
NHSのほかにはもちろんプライベートクリニックもあって日系人の短期滞在者の多くはこちらを利用しています。NHSには、中絶と出産費用なども含まれていて、何かの事情で中絶が必要な場合は法定期間内24週までは手術ではなく投薬によって行われています。
イギリス人のほとんどは妊娠出産を日常生活の一部と考えていて初期の検査から出産、産後の家庭訪問までをすべてミッドワイフ(助産婦)が行います。だから産科の医師は異常のあった時のみ診察になります。これらのことを病気のようには考えないので出産までにミッドワイフに会うのは数回で陣痛が始まって病院で初めて内診があるのは日本人には少し不安なシステムかもしれません。
駐在員夫人の多くは言葉やNHSに関して不安があったり納得のいかない部分があるめプライベートの利用しロンドンにいる日本人のミッドワイフの付き添いを希望しています。
子供の予防接種は生後2ヶ月から始まり、日本とは少し異なります。例えばMMR(麻疹、風疹、おたふく風邪)の3種混合があったり。これは現在日本では中止になっていますが、ここでは行っていて副作用の問題などがよく報道されています。別
々に行って欲しいという親たちの声が多い中、政府の負担だけではできないというのが現実のようです。もちろんMMRを別
々で行いたいときにはプライベートにいけばいいのですが……。
子供の予防接種は看護婦(看護士)、健康診断は保健婦が行います。出産と同じように子供も病気にならない限り医師による診察はありません。先月にも書いたようにブックスタートのサービスは8ヶ月診断のほかに、2歳半と3歳半の診断にもあるとのこと。イギリスでは昨年子供を出産した女性の4割はシングルマザーでした。
しかしこの事をきいて心配する人は誰もいません。というのも彼女たちは月々の家賃や食費などを含め月々約15万円の国からの援助が受けられるからです。仕事を持っていた母親には産休と育休の手当てが5ヶ月間、それからここで生まれた子供は親がここの永住権を持っていれば18歳になるまで毎月1万円が政府から払われます。
シングルマザーに対する援助がとても恵まれているように思えますが、これはイギリスだけではなく、ノルウェー、デンマークとスウェーデンで行われている制度でその中でも義父母の住むスウェーデンは毎年行われている世界調査、女性と子供が暮らしやすい国の世界1位
になっています。イギリスは4位、日本は先進国でありながら49位でした。
スウェーデンでは出産費用、子供の義務教育から大学までの交通費や給食費を含むすべてを国が負担しています。母親には産休と育休で約1年半、その間は今までの収入の8割が支払われその後も同じ仕事につくことができます。約8割の女性が仕事を持ち何事にも男女平等のこの国では、育児が母親だけの負担にならないように幼児を持つ父親も勤務時間を1日6時間にする法律になっています。
そしてその親たちのためにここにはプライベートの保育園や学校はなく、どこでも同じ料金で同じサービスを受けられるように決められています。子供は18歳になると選挙権を持ち、その後は独立して親と一緒に住むことはありません。年をとり介護が必要になっても一緒に暮らす家族はほとんどなく、人々は世代の違いや考え方の違いによって同居することは無理と考えているため福祉制度がとても発達し充実しています。
体が不自由になってもヘルパーのサービスを受け自宅で生活したり、サービスハウスに自分が使っていた家具を持ち込んで共同生活をするなど本人の意思によって受けられるサービスが変わってきます。だからこのサービスにはほとんどの人が満足していて本人たちも家族に迷惑をかけずに生活できると言っていました。
定年者や障害者はこうした制度についてすべての人に同じ権利があると考えているようです。スウェーデンの福祉制度はほかの国々や日本からの関心が高く、毎年施設見学に来るほどです。
また医療に関してもとても発達していてスウェーデン国籍を持ち国内に住所登録をするとパーソナルナンバーが持てます。これにより医療費、手術、入院費などは国の負担が受けられます。また病気になって救急車を呼ぶほどでもないときなどは専用のタクシーを呼べ市内ならタクシー代は往復で1,000円と決められています。
子供の救急病院は建物自体が別に建てられていて、待合室と診察室が一緒になった部屋が10数室あり、ここにはトイレやテレビなどもあって少しでも気分が休まるようになっていました、廊下にはおもちゃや本の置いてあるプレイルームのほかに木製の大きな機関車が置いてあって病院の広さと清潔さは世界一と言われていることに納得できるものがありました。
スウェーデンでは小学校から英語を勉強していて成人のほとんどの人が英語も話せるため病院での言葉の不安はありません。それから癌などの緊急手術が必要な病気にもとても対応が早く優れています。
去年、義姉の婚約者が数ヶ月前から頭痛がするというので病院で検査したところ脳腫瘍との診断で症状も中期まできていました。医師は詳しい検査をつづけ外側から数ミリの穴をあけてレーザーによる手術を行い週2回の通
院と数回の治療で入院することなく病気は6ヶ月で完治しました。この間のタクシー代から治療費まで自己負担は何もなかったとのことです。
義姉たちは今回のような思いがけない病気になっても、お金の心配はないし外国に行き手術を受ける必要もないスウェーデンの保障制度と医療に、とても満足しているようです。世界でもっとも進んだ医療としっかりとした社会保障の国に住んでいる人々は外国に住みたいと思う人も少なく、心にゆとりのある暮らしをしています。
スウェーデンでは消費税が25%、所得税が40%と国民の負担はとても大きいとい
われていますが、それは結局自分がいつか必要になったときに困らないため、すべての人が幸せで暮らせるためのお金だからと人々は言っています。
しかし国民の3割が18歳以下の子供と定年者、毎年増えるシングルマザーのため国民と政府の負担は大きいようにも見えました。
男子には約9ヶ月間の兵役があり、避難民も受け入れているこの国では平和と平等が本当に大切にされています。その結果
、戦争のときでも中立を守り続けたことにつながっています。
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国民はサマーホリデーを4週間、クリスマスホリデーを3週間とり休みの時には家族で過ごします。
人付き合いもお互いの自由を尊重しあい干渉することもほとんどありません。仕事より何より家族が一番大切と考えている人々にとって、スウェーデンが世界で一番暮らしやすい国と思うのも当然のように感じました。
来月は子供の教育についての紹介です。
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