■ボストン便り〜2003年8月〜

NYへ〜Acela expressの旅〜


今回はちょっとNYへの旅です。今回3回目になるのですが、最初は飛行機で、次は自家用車で行きましたので、今度は鉄道で行ってみることにしました。

一般に、ボストンからNYに行く手段としては一番安いのは車かバスで、車はガス代と一部有料高速道路の通 行料が10$くらい、チャイナタウンから出ているバスだと一人往復$20前後で4時間半くらいかかります。その次に安いのが鉄道で片道90$ほど、一番高いのが飛行機で片道120$くらいです。アメリカで鉄道の旅というと「アムトラックで巡るロッキー山脈の旅」的な観光列車のイメージがありますが、東海岸のボストン〜ニューヨーク〜ワシントンにはAcela express(アセラエキスプレス)というビジネス特急が 走っています。

飛行機だと1時間で飛べるボストン〜ニューヨークを列車だと3時間30分もかかって、どこがビジネス特急だという感じもしますが、アムトラックの駅はボストンもニューヨークもダウンタウン中心部にあり、飛行機と違ってチェックインカウンターに並ぶ必要もないので、トータルの時間では意外と飛行機に対して競争力がある筈です。

実際アムトラックはかなり経営危機なので、このAcela expressは起死回生の一手なのです。

Acela(アセラ)はヨーロッパ製の、ドイツのICEに良く似た新型の車両を使っています。ビジネスクラスとファーストクラスの2クラス編成でビジネスクラスに乗ってみました。

営業開始してまだ数年ですから車内もアメリカの鉄道とは思えないほどきれいです。

車内にはカフェテリアもあってコーヒーや軽食、ビールなどを買うことも出来ます。シートの幅と間隔は新幹線の普通車の2割増し以上で、大柄な人が乗っても十分な広さがあります。

各シートには通常の120Vのコンセントが2つついていて、さらに車両の両端にはボックスシートの真中に120×60cmくらいのしっかりしたテーブルがついています。載るや否や、携帯とPCを取り出してコンセントにつなぎ、資料を机の上に並べて打ち合わせをしたりプレゼンのチェックをしたりするダークスーツ4人組みがあちこちにいて、ビジネス特急の名前は伊達ではないことを実感させてくれます。

海沿いを走れば、大西洋に面したヨットハーバーやプロビデンスのダウンタウンなどを通過して、景 色もなかなかgoodです。最高時速は150マイルというものの、実際にその速度が出せる区間は全体の数割なので、大半の区間はこれまでのamtrakと同じようにのんびり走ったり徐行したりが続きます。新幹線に比べて……比べるべくもなく低速なので……のんびり景色を眺める余裕もあります。

と。一見快適なacela expressですが、ここはアメリカなのでそうは問屋が卸しません。空港の発着表示ディスプレイと同じように、アムトラックのステーションにも到着・出発表示のディスプレイがあるのですが、出発のほんの数分前まで出発ホームナンバーが判明しません。acelaは新幹線と違って在来線を走りホームも在来線と共用していますので、近郊線の発着にまぎれて運行されています。そのためギリギリまで待合室で待って、ディスプレイに表示が出るとホームまで駆けおりなければいけません。

さらに。アメリカの鉄道らしくダイヤがまったく当てにならないのです。今回の私たちのNY往復では、往路はボストン始発であるにもかかわらず出発が30分遅れでした。復路は5分前まで“on time”の表示だったものが、出発時間をすぎても出発ホームが表示されないので係員に聞いて見ると、“モニターの表示以外は何の情報もない”とアメリカのサービス業の模範らしい回答です。そのうちに、「3時の列車は“キャンセル”されました」という頼もしいメッセージが流れ、acela難民はチケット売り場に殺到することになります。係員が出てきて乗客に説明をはじめます。

3時の列車はキャンセルになった。
3:30の各駅停車に乗ることが出来ます。acelaよりボストンまで1時間30分ほど余計にかかります。ただしほぼ満席状態なのでご利用はお早めに。
4時のacelaは現在1時間20分ほど遅れて出発の予定です。こちらに乗ることも出来ます。
払い戻しはサービスカウンターへ。
またのアムトラックのご利用をお待ちしております。

「もうアムトラックは信用できない」などの怒号も飛び交う中で、明確に説明されるのはアメリカらしいところですが説明される内容はとんでもない話です。たまたま大荷物だった我が家は次のacelaに予約を振り替えてもらいました。

しかし、4時半を廻るころにいきなり次のacelaもキャンセル表示。泡をくった私たちは、チケットカウンターに駆けつけてさらに次の5時のacelaへの振替を要求すると予約がいっぱいで、次の各駅停車に乗れと言われる始末です。途方にくれているといきなり「3時と4時のacelaの乗客のための臨時特急を5時30分に出します」というアナウンスが。ホームに駆けつけるとエスカレーターのところで怒れる乗客に出くわします。どうも5時のacelaもキャンセルされた模様で、その乗客がこの救済特急に乗せろと交渉しているようなのですが、係員は「お客様、これは3時と4時のacelaの救済特急なのでお乗せできません。次のacela expressをお待ちください」と丁寧に断っています。こういうのを火に油と言うのだと教えてあげようと思ったのですが英語の適当なことわざが見つからなかったので ほっておきました。

なんとか乗り込むと、さすがにこの列車は本当にNYを出発して、車掌さんが検札に廻ってきました。検札をしながら、私たちに「なんでこの列車はこんなに乗客が少ないんだ?駅でなんかトラブルでもあったのか?」と聞いてきたのには返す言葉がありませんでした。

3時のacelaの乗客は、3時30分の普通列車に乗ったようなのですが、4時の乗客はいったいどこに消えたのでしょう?

せっかくの臨時列車ですが、がらがらで足を伸ばして座席を独り占めできるぐらいの乗客しかいませんでした。臨時列車だったので、acela expressの快適な車両ではなく、普通車両だったのが残念です。

後日ボストンに帰ってみると、友達がちょうど私たちの前日の同じ3時のacelaでNYからボストンに帰ろうとしていたことが分かりました。……“帰ろうとしていた”だけで、彼らの乗ろうとしたacelaもキャンセルになったそうですが……。

というわけで、我が家は予定より5時間遅れで無事ボストンに帰ってきました。Amtrakの名誉のために付け加えますと、acela Expressの定時運行率は80%程度にはなっているそうですが、acelaエクスプレスをご利用の際は十分に余裕を見て計画をおたてください。

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ボストン在住ひいらぎさん一家
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