●絵本、他
うさぎ、うさぎ、
どこいくの?

ピーター・マッカーティー作・絵
多賀京子訳
徳間書店 本体:1600円
霞の中、それも春霞の中を歩いていくうさぎ、ほんとにどこにいくのだろう。まるで夢の中のような不思議な絵本です。
あなたにも聞こえますか?
“うさぎ、どこへいくの?”
満月をまって
メアリー・リン・レイぶん
バーバラ・クーニーえ
掛川恭子やく
あすなろ書房:本体1400円
今年逝ってしまったクーニーの1999年の作品。『にぐるまひいて』の様な絵本です。
100年も昔、コロンビア郡の山間に、かごを作って暮らしていた人達がいました。でも近代化の波、最後まで作り続けていた人も1996年に亡くなり、かごは今でも使われてはいるものの、もう作る人達はいなくなってしまったそうです。
父から子へ、人から人へと伝えられた手仕事は、丈夫で素朴で非常に美しいもの。
今世紀もあと僅かで終わろうとしていますが、便利さの陰に、私達は大切なものを失ってしまったのかも知れません。
ぞうのさんすう
ヘルメ・ハイネ さく
いとうひろし やく
あすなろ書房:本体1000円
1−1=0になりますか?生き物は死んだら何が残るのでしょうか。100年生きたぞうは0(ゼロ)という事がどういう事か分かりました。作者はこの哲学にウンチを使って答えています。
そうです!ぞうという長い時間を生きる動物を使い、その生きている証明であるウンチを使って答えています。モノクロのシンプルな絵本はあなたを静かに励ましてくれます。
念のため、この本は数学の本ではありません。
プロフェッサーPの研究室
岡田淳
17出版:本体1400円
学校を舞台にした物語を書いている岡田淳がマンガを描いていたなんて、それもとびきりおしゃれでおかしいマンガを。久しぶりに笑いころげてしまった。アァ、そんな私は健康!!
10才位から。(4年生の子が面白がって読んでいた。そして買って行った。)どれが面白かったかいつか聞いてみよう?
科学と科学者のはなし
寺田寅彦エッセイ集
池内了編
岩波書店:本体680円
新装になった少年文庫の一冊です。
『茶碗の湯』『線香花火』『蓑虫』を読んだのは高校生の頃でした。編者の池内さんと違い、全くの数学オンチだったので科学に目を開かれる事はなかったのですが、作者の寺田寅彦の物の見方に“へぇ〜”と新鮮な驚きを持ったことを良く覚えています。
科学の本にもこういう本がたくさんあると良いと思います。
●歴史(戦争)伝記、他
第八森の子どもたち
エルス・ペルフロム作
野坂悦子訳
福音館書店:本体1700円
きびしい戦争の冬、11才のノーチェはオランダのアルネムでお父さんと暮らしていました。(お母さんは以前病気で死んでしまいました。)戦争が激しくなって疎開しなければならなくなり、ラップヘクの農場へ行き着きました。
戦争の中にも子どもたちの生活があります。大人たちの生き抜く力があります。死と悲しみ、でもその何倍もの喜びがあったから、人々は何とか生きていく事ができたのでしょう。
静かに淡々と語られていて、それだけに胸を打たれました。中学生ぐらいから。
サダコ
カール・ブルックナー著
片岡啓治 訳
よも出版:本体1500円
ヒロシマ公園に建っている 記念碑の先端にある像、佐々木サダコとその兄、家族を中心に、原爆投下に関わった人々、何も知らないで死んでいった人たち、医師、色々な人たちの投下の日とその後が書き綴られています。
オーストリアの作家であるブルックナーの30年前に出された本の復刻版です。守屋敦子さんの大学院の研究テーマがきっかけだったとか。
「20世紀は戦争の世紀」改めて考えてみたいと思います。
農場にくらして
アリスン・アトリー作
上條由美子/松野正子訳
岩波少年文庫:本体800円
アトリーの自伝『農場にくらして』を読むと、古い農場暮らしのアトリーの少女時代のこと、その農場を取りまく自然の大きさと不思議さが彼女の作品に大きく流れているのを感じます。(今、英語のサークルでこの原書を読んでいます。関心のある方はご参加ください。)
挿し絵のことが何も書かれていませんが、C・F・Tunnicliffeの絵が良く物語を表現しています。
中学生ぐらいから。
ベルリン1933
クラウス・コルドン
酒寄進一 訳
理論社:本体2400円
何故ドイツはあの戦争にのめり込んでいったのだろうか?
1933年ヒトラーは首相になる。人々はヒトラーを指導者として選んだ。この作品は15歳のハンスを中心に当時のベルリンで生きた労働者ゲープハルト家とベルリンの街が実証的に物語られている。
貧困にあえぎ、裏切りと失望の中、精一杯良心的に生きていこうとしているこの一家を襲ったものは……。
ハンスの兄ヘレの娘、生まれたばかりのエンネに引き継がれていく次作の出版が待たれる。
本の前後に当時のベルリンの写真が入っていて、日本でも若い人たちにこういう歴史小説が出版され、読んで欲しい。
ビリー・ジョーの大地
カレン・ヘス作
伊藤比呂美訳
理論社:本体1500円
1934年大恐慌、干魃とイナゴの害でアメリカ、オクラホマの大地は荒れ果 てていた。父親のちょっとした不注意と少女の勘違いから、母親も生まれてくるはずだった赤ちゃんも死なせてしまう。真実を語らない父親と生活に絶望した少女は家を出る。
この詩みたいな日記みたいな特異な文体を持った物語をアメリカに住んでいる訳者は13才と15才の娘に下訳してもらったところ、あまりにも瑞々しいその日本語に目が眩んだとのこと。文体だけでなく、著者と訳者の感性が一体になり、非常に豊かなイメージを生み出したからに違いない。
1998年度ニューベリー賞受賞作品。中学生ぐらいから。
●ファンタジー、他
時間だよ、アンドルー
メアリー・ダウニング・ハーン作
田中薫子訳
徳間書店:本体1400円
いじめっことキャンプで一緒になるのがいやで両親が旅行の間おばさんの所へきたアンドルーはそこで車イスで生活しているひどく怒ってばかりいる老アンドルーと、1910年に生きているがジフテリアにかかって死にそうな男の子アンドルーと出会います。
入れ替わった男の子たち、起こった事件。『トムは真夜中の庭で』のようなお話です。
同じ作者の作品には『十二月の静けさ』という本があり、私は好きな本でした。(残念ながら今は出版されていません。)6年生ぐらいから。
夢の守り人
上橋菜穂子作
偕成社:本体1500円
3部作の完結編です。人の世界とは別の世界、そこでは人の夢で生きている〈花〉があり、現実の世界の不幸を呪っている人はその〈花〉の世界で永遠に夢を見、まどろみ続けることを望んでいます。
タンダは〈花〉の夢からさめない姪のカヤを助けようと、魂呼ばいの儀式を執り行おうとしますが、逆に〈花〉のとりこになってしまいます。トロガイ・チャグム、そしてバルサはタンダを助けようとしますが……。
とても幻想的な物語世界をたっぷりと味わうことのできる日本のファンタジーといえる作品です。中学生位 から。
ケルトの白馬
ローズマリー・サトクリフ作
灰島かり訳
ほるぷ出版:本体1400円
オックスフォードから30k離れたアフィントン村の白馬の地上絵、これにはこんな物語があります。もちろんこの物語はサトクリフが紡ぎ出したものにほかならないのですが。
イケニ族の族長の息子の1人に生まれたルブリン(他の兄妹と違って、彼だけは被征服者の血を引いている)には心に感じた感動を絵で表現する能力が生まれながらにありました。新しい族長が誕生しようとする祭りの夜、テトレバーテス族の侵略に遭い、亡ぼされてしまいます。ルブリンは生き残った僅かな仲間を解放するという条件で、砦に消える事のない太陽馬を描くことになります。
白馬の地上絵は完成し、仲間達は解放されますが、ルブリンはたった1人残り、天と地の溶けあった場所に横たわるのでした。
サトクリフらしい骨太の、それでいて孤独に満ちた清冽な物語です。装丁も美しく秀作。
中学生ぐらいから。
ブループリント
シャルロッテ・ケルナー
鈴木仁子 訳
講談社:本体1600円
有名なピアニストであるイーリスは不治の病に冒されたことを知って、クローンの娘スーリィを生む事を決心します。
SIRI(スーリィ)はIRIS(イーリス)に似た娘でなく、そのもの。
イーリスの母親はスーリィのことをバケモノと言います。
この作品はそんなに遠くない未来に登場するかも知れないクローン人間のことを扱っていますが、それだけでなく、本当の自分とは一体何なのかと子どもたちに、子供を生んで育てるという事はどういう事なのかを大人に問いかけています。(児童文学の中にクローン人間が出てきたのはこの作品が初めてだと思います。)
不思議の風ふく島
〜飯田さんの運転日誌〜
竹内もと代 作
小峰書店:本体1400円
飯田さんは1日4回島に発着するフェリーボートの時間に合わせて、島を一周する定期バスの運転手。
そのバスに起こったお話が6つ入っています。ちょっと不思議な話やヘンテコな話、でも、どれもが心の中がちょっぴりじーんとする話です。
こういう話の舞台にバスやタクシーが使われるのは、それが人を運ぶだけでなく、時も気持ちも運ぶからかもしれません。
こんな歌もあります。知っていますか?
“ぞうれんしょう ぞうれんしょう ぞうりがなくては かくされまい”
6年生ぐらいから
●青春、自立に向かって
ティーパーティーの謎
E・L・カニグズバーグ作
小島希里訳
岩波少年文庫:本体680円
6年生のノア、ナディア、イーサン、ジュリアは博学競技大会で見事優勝を決めました。4人はどうやって親友になったのか?4人とも複雑な家庭の事情があります。
カニグズバーグの作品は横糸と縦糸が上手く織り重なっていて、推理小説を読むような面白さがあります。中学生ぐらいから。
マーガレットとメイゾン
〜マディソン通りの少女たち1〜
ジャクリーン・ウッドソン作
さくまゆみこ訳
沢田としき絵
ポプラ社:本体1300円
ニューヨーク。マンハッタン近くのマディソン通 りに住むマーガレットとメイゾンの友情物語。
とはいえ、この少女達をとりまく親、友達、住人達、どの人もアメリカではごく普通の人達かも知れませんが、著者はアメリカの影の部分と言われている黒人や有色人種、先住民、貧しい白人やゲイの人達を登場させています。
その中で精一杯、自分らしくありたいと願う2人の少女の物語は、彼女達の自立の物語であり、脈々と流れているアメリカの明るさの物語とも言えるのです。
中学生ぐらいから。
青い丘のメイゾン
〜マディソン通りの少女たち2〜
ジャクリーン・ウッドソン作
さくまゆみこ訳
ポプラ社:本体1300円
マディソン通りの少女たちの第2巻目。奨学金をもらって私立学校、青い丘学園へ行き、寄宿生活を始めたメイゾンのことが語られています。
メイゾンの入った学校は200人ぐらいの生徒のうち黒人はたった5人しかいません。それもメイゾンを除いて黒人でも豊かな家庭の子どもです。けれどもルームメイトのサンディも含めてメイゾンは優位と思われている白人の中にも色々な生徒がいることを知ります。その中でメイゾンは自分の場所が探せなくて悩みます。そして決心するのでした。「黒い肌でも勉強したい人がうまく収まれる場所を探そうと思います。どこかにそういう場所があるはずですよね?」と……。
3巻目が待たれます。
テディベアの夜に
ヴィヴィアン・アルコック作
久米穣 訳
金の星社:本体1400円
わたしケイトは両親と3人で何不自由なく暮らしているのですが、昔、乳母車からさらわれてしまったという姉がいたことを知ります。その時から母親は神経が弱くなり、私もまた、両親が本当に愛しているのは私でなく、エマなんだと思う様になってしまいます。
11才の8月1日(エマがいなくなった日)そのエマが突然現れます。ロージーと呼ばれて育った少女は1通 の手紙を持っていました。ロージーは本当にエマ?その証明を探すうちにケイトは知るのでした。自分は誰でもなく自分自身でありたい、それは自分が他の人を認める事によって、自分は誰でもなく自分なのだと理解する事が出来たのでした。
中学生ぐらいから。
金鉱町のルーシー
カレン・クシュマン
柳井薫 訳
あすなろ書店:本体1400円
『ローラ・インガルスの物語・大草原シリーズ』の街版のようなお話です。この物語では東部の町育ちの少女ルーシー一家が西部(ゴールドラッシュに湧く)に来たところから始まります。ルーシーはこんな生活が嫌で仕方ありません。本とアイスクリームと暖かい落ち着いた暮らしのおじいちゃん、おばあちゃんの農場が忘れられません。
自分勝手で情熱的な母親をはじめとして、たくさんの魅力的な大人が出てきます。最後のルーシーの決心。
町の様子の描写など、とても読みごたえのある秀作です。
中学生ぐらいから。
肩胛骨は翼のなごり
デイヴィッド・アーモンド
山田順子訳
東京創元社:本体1450円
マイケルは両親と生まれて間もない赤ちゃんの3人でファルコナー・ロードに引っ越してきた。冬のある日のことだった。隣に住む学校教育を受けないミナと仲良しになる。
そして、マイケルの家の庭に危険なまでに崩れ落ちそうな小屋があり、ある日その中で不思議なもの、汚くて、人か何か他の生き物か分からないものと出会う。その生き物は肩胛骨のところに翼を持っていた。
一方赤ちゃんは果たして生きていけるか分からない。マイケル一家の再生の物語とくくってしまえない不思議な意味を持った作品だ。
ミナはこう言う。「あたしたちには分からないこと。時には分からなくても、それをそのまま受け入れなくちゃいけない。何故あんたの妹は病気なのか?何故あたしのお父さんは死んでしまったのか?」……「時には全てを知りたい、知っておくべきだって気になる。でも、それはできない。見るべきものを見て、想像するしかできない。」
装丁が一般書向けなのが残念。(5年生ぐらいから読むことが出来るのに。)


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