●絵本・画集・詩・他
桃源郷ものがたり
文 松居直
絵 蔡皋
福音館書店:本体1600円
燃え立つような一面の桃の花、息をのむほど鮮やかで美しい絵本です。
ふと迷い込んだ世界、二度と行くことが出来ない桃源郷。
陶淵明の名作は良く知られているお話ですが、中国でも日本でも人の夢見る理想郷は同じ。ゆっくりと絵を見ていきたい絵本です。
ねこたちの夜
作:ブルース・イングマン
訳:江國香織
小学館:本体1400円
あなたの家の猫は、夜あなたが眠っているときに何をしているか知っていますか?
“ぼくはスクーターに乗ってキャット・アカデミーに行って勉強しているのさ。学校が終わればオードリーとデート”『ローマの休日』の映画シーンを観ているページには思わず笑ってしまいました。オードリーとオードリーを観ているのです。
訳文も上手く合って、とってもオシャレな絵本です。
エドワード・アーディゾーニ
友へのスケッチ

ジョディ・テイラー編
阿部公子 訳
こぐま社:本体2800円
アディゾーニという人は古風なイギリス紳士だけれど、とてもユーモアのある人です。絵が描きたくて何にでも描いたと言うことですが、彼が出したたくさんの水彩画入り手紙、子どもたち、孫たち、友人たち、妻や甥に出した1935年〜1968年のものが収められています。
編者はイギリス、ホドリー・ヘッド社で児童書の編集をしていた人で『ビアトリクス・ポター』(福音館書店)の著書があります。
絵本 夢の江戸歌舞伎
服部幸雄 文
一ノ関圭 絵
岩波書店:本体2600円
歌舞伎は日本の伝統芸能として名前だけは良く知られていますが、意外と見たことのない人が多い、まして江戸時代の様子など知らない人がほとんどです。江戸時代では今と違って本当に大衆の楽しむ娯楽の一つでした。
さあ、この絵本の男の子に案内してもらいながら歌舞伎の面白さを体験してみましょう。舞台だけでなく、その舞台を支えていた人たちがたくさん出てきます。本の後ろに歌舞伎だけでなく、それを生み出した江戸時代の解説も付いています。10才ぐらいから。
かえるだんなのけっこんしき
ジョン・ラングスタッフ再話
フョードル・ロジャンコフスキー絵
さくまゆみこ訳
光村教育図書:本体1300円
おはなし歌、ちょっと聞き慣れない言葉です。最初はいつ、どうやって出来たか分からないが、お話というより歌ったり語ったり、何代も伝えられてイングランド、スコットランドからアメリカへ。そして『かえるとねずみ』のお話が出来上がってきたとのことです。明るくて、でも自然の描写はユーモアの中にもしっかり描かれています。
1956年度コルデコット賞受賞作品。楽譜つきです。
おーい ぽぽんた
〜詩と短歌と俳句166篇〜
茨木のり子、大岡信、川崎洋、岸田衿子、谷川俊太郎 編集委員
袖木沙弥郎 画
福音館書店:本体全2冊2400円
小学生に暗唱して欲しい詩と短歌と俳句166篇”というサブタイトル通り詩と短歌と俳句のアンソロジーです。
個人詩集は出版されるようになりましたが、なかなか良いアンソロジーが少ない中、とても良い企画だと思います。もちろん声に出して。言葉と身体は強い結びつきがあります。楽しい。
奇跡の子
ディック・キング・スミス作
さくまゆみこ訳
講談社:本体1500円
1926年、イングランドの片田舎、丘の上農場に捨て子があり、羊飼いのトムとキャシー夫婦に育てられることになります。スパイダーと名付けられた子どもは歩くことも、言葉を話すことも遅く、けれど不思議な能力を持っていました。それは鳥や動物たちと話をすることが出来、心を通わせることが出来るのです。農場主や他の農夫たちははじめは気味悪がり、バカにするのですが、やがてスパイダーはみんなのかけがえのない子どもになっていきます。彼は人の心を優しくしてくれる幸運な子どもでした。
登場する大人たちが本当に大人らしい大人にかかれていて、それらがこの作品の一番の魅力になっています。装画、挿画も作品にピッタリです。
予言の子 ラノッホ
デイヴィット・クレメント・デイヴィーズ作
多賀京子 訳
徳間書店:本体3000円
舞台は古代スコットランド、額に予言にうたわれた印を持つアカシカの雄ラノッホは自分を知るために一人で冒険の旅に出ます。
そして、悩み苦しみながらも自ら運命を生きていったラノッホ。
背景の美しい自然描写と一緒に深い思索に満ちたこの物語を読む。読むと勇気づけられます。
●歴史・戦争・伝記
昭和こども図鑑
20年代、30年代、40年代の昭和のこども誌
文 奥成達
絵 ながたはるみ
ポプラ社:本体1600円
高度成長以後、日本はすっかり変わったと言っても良いと思います。敗戦後からそれまでに育った人たちから、そろそろおじいちゃん、おばあちゃんが生まれてきています。
貧乏だったし、悲しいこともたくさんあったけれど、元気で自然の中でたっぷり遊んだ子どもたち、前半のエッセーがとても面白い。
フェアマウント通り
26番地の家

トミー・デ・パオラ 作・絵
片岡しのぶ 訳
あすなろ書房:本体1200円
『まほうつかいのノナばあさん』でコルデコット賞をとったパオラの自伝。
5才の時引っ越してきた家、この前後のパオラ自身のことと家族のことが9つのお話になっています。暖かい作風はこんな中で育ったからだと思われます。もちろんちょっとやんちゃなパオラがいます。
2000年度のニューベリー賞受賞作品です。7才ぐらいから。
六号病室のなかまたち
ダニエラ・カルミ 作
樋口範子 訳
さ・え・ら書房:本体1300円
少年サミールは弟をイスラエル兵に殺され、生まれたときからパレスチナ・アラブ人として、イスラエルへの憎悪の中で育ちます。
そして膝のケガのため、入院した病院で手術することになり、不安と恐れのために追いつめられていきます。けれど同じ病室のイスラエルの子どもたちと月・日を共にするにつれ、少しずつ彼らとの間に友情が芽生えてきます。ヨナタンとの火星探検、最後にはイスラエル兵を兄に持つツァヒとも笑い合えるようになります。
“ぼく自身が元のサミールから少し変わったのだと思う”戦争はなくなったわけではないけれど、サミールはそう思うのでした。10才ぐらいから。
炎の秘密
ヘニング・マンケル作
オスターグレン晴子 訳
講談社:本体1500円
アフリカのモザンビーク、少女ソフィアは元気な女の子、父を内線で殺され姉マリアと弟と母親と放浪の末、やっとある村に落ち着きます。かつて父親が買ってくれた一枚の白いドレス、そのドレスを姉に着せたくて縫うことを習い、それはやがて地雷で両足を失うことになるソフィアの生きる道しるべになるのでした。
作者は最初の作品『少年のはるかな海』でスウェーデンの街に生きている人たちの孤独と再生を少年の目を通して書いていて、この本も決して暗くはなく、静かな深い感動を与えるのはソフィアの成長の物語だからだと思います。
花岡道子の画もとても良い。12才ぐらいから。
えんの松原
伊藤遊 作
太田大八 画
福音館書店:本体1500円
時は900年代半ば、藤原氏が権力を手にし都には怨霊の祟りから逃れるために僧侶や陰陽師が暗躍していました。怨霊に両親を殺された(?)音羽丸は女童になり宮中に仕えている伴内侍に預けられました。ある日誰も入ってはならない帝の宝が納められている温明殿で皇子の憲平に出会います。憲平は祟られて時々おかしくなるとのこと、怨霊とは一体何で、どうしたら逃れることが出来るでしょうか?
怨霊という目に見えない悪、深い心の闇、自分は何なのか、どう生きていけば良いのか、現代にも通ずる物語だと思います。作者2作目の作品、前作『鬼の橋』よりまとまった物語作品になりました。12才ぐらいから。
虚空の旅人
上橋菜穂子 作
偕成社:本体1500円
『守り人』シリーズの4作目ですが、外伝、つまりバルサは登場しません。新ヨゴ皇国の皇太子チャグムと星読博士シュガがサンガル王国の新王即位の儀に招かれたことから始まります。
そこではサンガル王国をを侵略しようとしているタルシュ帝国、迎え撃つべくチャグムとシュガは張り巡らされた陰謀の中に引き入れられてしまいます。
人生の危うさと確かさが壮大な物語の中として描かれています。12才ぐらいから。
月冠の巫王
たつみや章 作
講談社:本体1600円
時代は縄文と弥生、『月神の統べる森で』で始まった長編物語もこの4部作で完結。
このシリーズは表紙の絵などが内容にそぐわないから、古代歴史小説にはとても思えず、実際は日本古代の神話的物語をしっかり柱にして、とても読みごたえのある作品になっているのです。
最後のこの本は少し早足になってしまったきらいがありますが、作者の持つ、日本の子どもたちに日本の文化から生み出された物語をプレゼントしたいという願いは十分伝わると思います。これからも期待したい。12才ぐらいから。
緋色の皇女アンナ
トレーシー・バレット作
山内智恵子訳
徳間書店:本体1500円
11世紀、ビザンチン帝国に実在したアンナ・コムネナがモデルになっています。アンナは皇帝の世継ぎに生まれ、権力と陰謀の中で成長しますが地位を失ってしまいます。けれどアンナはそれを越えたかけがえのない人たちとの繋がりを得ることが出来ます。
登場人物の1人1人が生き生きと描かれています。舞台になった宮廷や図書館、修道院もきっちり書かれていて読みごたえのある小説。中世にこんな女性がいたということは大変な驚きでした。
のちに弟ヨハネスはビザンチン帝国の名君といわれたとのことですが、これも興味深いことです。
砂漠の物語
郭 雪波 著
松瀬七織 訳
福音館書店:本体1600円
ここに出てくるのは人と砂漠とオオカミとキツネ、いずれも過酷なまでの自然、何もかも飲み込んでしまう渇きと熱砂嵐、そこでは少しの油断も失敗も命にかかわります。
そんな厳しい中にも人は歓び、哀しみ、生きていこうとします。それは人だけでなく獣にも同じことなのかもしれません。何のためにそこで生き続けようとするのでしょうか。
作者は1948年生まれ、モンゴル族の出身。
●ファンタジ−・冒険
The Wreckers
呪われた航海

イアン・ローレンス作
三辺律子 訳
理論社:本体1500円
18世紀イギリス、少年ジョンが父を手伝って初めて乗った船は大嵐に遭って難破してしまいます。ジョンはやっと助かりますが、その難破を待っている人がいました。レッカー、怪しい死者の火、そしてメアリーという少女に出会い、やがて忌まわしい事件に巻き込まれ、追われて逃げます。
久しぶりに古典的で骨太な、『宝島』のような冒険小説を読みました。やたらキラキラした冒険小説が多いのですがこれはオススメの一冊です。中学生ぐらいから。
影の王
スーザン・クーパー作
井上朱実 訳
偕成社:本体1500円
ナットは全米の学校や子ども劇団から選ばれた少年俳優の一人で3週間のリハーサルのあと、新グローブ座で公演することになっています。ナット達はイギリスに行きホームステイをしながら公演に臨むことになります。ある日ナットはめまいを起こし、目を覚ますとそこは1599年のシェイクスピア率いる宮内長官一座でした。パック(妖精)を演ずるナットはその中で深い心の傷を回復していくのでした。
ミステリアスな話と登場する実在だった人たち、当時のロンドンの街の様子など大変面白く深い内容の物語です。
以前紹介した『シェイクスピアを盗め!』『シェイクスピアを代筆せよ!』そしてナットが出てくるとされる『あらし』を合わせて読んでみましょう。中学生ぐらいから。
シェイクスピアを
代筆せよ!

ゲアリー・ブラックウッド著
安達まみ 訳
白水社:本体1800円
速記術を身につけたためにある事件に巻き込まれたウィッジ少年は宮内大臣一座の役者になるまでが前作『シェイクスピアを盗め!』の物語でした。続けて17世紀初めのイギリスを舞台に物語は繰り広げられます。
1602年の夏、ロンドンでペストが再発したため劇場は閉められ、役者たちは旅回りをすることになります。もちろんシェイクスピアも引き続いて登場、シェイクスピアは役者であり、座付き作者、株主でもあり、ビジネスマンとしても成功したとのこと、その他たくさんの実在した人たちが登場、とても楽しい冒険小説のような趣です。
この本を機会にシェイクスピアの本を読んだり、芝居を見に行くことが出来たら、それに勝ることはありません。12才ぐらいから。
琥珀の望遠鏡
フィリップ・プルマン
大久保寛 訳
新潮社:本体2800円
ライラの冒険シリーズの3巻目(1巻:黄金の羅針盤、2巻:神秘の短剣)1巻2巻が続けて出版されたのになかなか3巻が出なくてファンをやきもきさせました。
この部門では近年最高の作品といえます。不思議な力を持つ短剣をたずさえて、ライラとウィルの担った役割とは?完結です。
ローワンと伝説の水晶
エミリー・ロッダ作
さくまゆみこ訳
あすなろ書房:本体1400円
シリ−ズ3巻目。物語が複雑になり、おもしろくなってきました。ローワンは水晶の力を得て、より成長してリンの村に帰っていきます。
4巻目が楽しみです。
ネシャン・サーガ
ネシャン・サーガ。
ライフ・イーザウ作
酒寄進一 訳
あすなろ書房:本体2400円
ヨナタンは伝説の杖ハシェベトを手にし、裁き司に会う旅を続けます。そしてジョナサンは?“おじけつかず前に進むこと、それこそ自分も世界も救える”作者からのメッセージです。
魔法使いはだれだ
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作
野口絵美 訳
講談社:本体1300円
『大魔法使いクレストマンシー』このシリーズ3巻目。
魔法は厳しく禁じられていて、見つかれば火あぶりにされるという世界、2年Y組に「このクラスに魔法使いがいる」というメモが見つかる。誰が書いたのか?そして誰が魔法使いなのか?
元気なそしてずいぶんときらびやかな魔法物はここ相次いで出版された本と同じですが、決定的に違うのは善と悪という二元論を取らずに捻れた世界としているところです。後のシリーズが楽しみです。12才くらいから。
トニーノの歌う魔法
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作
野口絵美 訳
徳間書店:本体1700円
『大魔法使いクレストマンシー』このシリーズ最後の4巻目、今度の舞台はイタリアの小国、そこには魔法の呪文を作る2つの家系がありましたが、両家は反目しあっています。
そして魔法は弱まり他国に侵略されそうになるのですが、両家の子どもたちは力を合わせて戦います。惑わされて呼び出されたトニーノ達は人形の大きさにされ、人形の家に閉じこめられてしまいます。
お芝居、オペラと大変にぎやかで楽しい冒険物語です。
『夏の王』
O・R・メリング作
井辻朱美 訳
講談社:本体1500円
この本は1冊目『妖精王の月』続編とも言える作品でシリーズ4巻目、ファン待望の本です。
双子の妹オナーはまだ妖精世界に辿り着くことが出来ずにいて、ローレルが「夏の王」を探して魔法の島、ハイ・ブラシルに《夏至のかがり火》をともす使命を果たしたとき、オナーは妖精世界に迎え入れられると告げられます。生前理解者になれなかったと悔やむローレルはこの使命を果たそうと出発するのでした。ケルト伝説を下敷きにして物語は進んでいきます。《海賊女王号》のグレイス・オマリー、イアン、ワシの王、どれもが魅力的なキャラクターで充分読みごたえのあるファンタジーです。
●自立・青春・成長
ゆいちゃんのエアメール
写真・文 星川ひろ子
小学館:本体1400円
ゆいちゃんは耳が不自由な5年生の女の子、他はみんなと同じに何でも出来ます。ゆいちゃんのの一番の仲良し恵美子ちゃんはお父さんお仕事の都合でアメリカに行っています。
この本はゆいちゃんとアメリカの恵美子ちゃんとの往復書簡です。けれど、あとがきにあるようにこの往復書簡は4年間の取材に基づいての作者の創作との事、普通の女の子(一人は耳が不自由、一人は言葉が通じない)の生活と気持ちが写真と手紙を中心に読者に伝わってきます。
それは障害に関わりなく、お互いの伝え合う気持ちが一番大切なことだと、作者は淡々と語りかけています。
耳をすませば
エルケ・ハイデンライヒ作
ベルント・プフアー絵
平野卿子 訳
講談社:本体1300円
都会でお母さんと暮らしているケーテは、大好きなおじさんの所に行くことにします。おじさんは母さんの兄さん、田舎の生活がしたくて出ていったのです。母さんは田舎の生活なんて大嫌いです。
ケーテは汽車の中で動物の言葉が分かるという不思議な女の人に出会い、その人は辛抱強く耳をすませば動物の言葉が分かると言います。それは本当でした。
挿し絵もとても良く合っています。12才ぐらいから。
いつもお兄ちゃんがいた
アラン・アルバ−グ作
こだまともこ訳
講談社:本体950円
弟と犬一匹きりになってしまった9歳のフランシスは死んでしまった兄トムが幽霊になって自分達をいつも見守ってくれると思っています。フランシスはポリオで足が不自由です。辛くて悲しいことばかり、とうとう弟を連れて家出してしまいます。挙げ句のはてに運河に落ちてしまいます。フランシスを助けてくれたのはお兄ちゃんのトム、トムの幽霊でした。
幽霊が出てきても決して恐ろしい話ではなく、辛い悲しいことがたくさん出てきても暗い哀しい話ではありません。それは52才になったフランシスが思い出して書いている為でしょうか。それとも、愛する人を亡くした時、そのあと時々その人が現れるということを知っている人がたくさんいる為でしょうか。
文庫サイズの小さな静かな美しい本です。中学生くらいから。
star girl スター★ガール
ジェリー・スピネッリ作
千葉茂樹 訳
理論社:本体1380円
ハイスクールの2年生のレオの学校へ転校生が来ます。名前はスターガール。奇抜な服装でウクレレを背負い、バックにはペットのネズミを入れ、そしてランチタイムには誕生日の子の所へ向かってウクレレをかき鳴らし“ハッピーバースディー”と歌うのでした。スターガールに話しかけられると誰もが自分に自信を持て、元気が出ます。けれど人間は勝手で残酷。みんなに(自分だけでない)愛と希望を与えようとするスターガールを無視していきます。
集団の中で自分は自分であろうとする心の願いは間違っていることでしょうか?町はずれの砂漠のシーンは大変美しい。また、学校の教師が全然登場せず、考古学者のアーチー、ほんの少しだけ登場するスターガールの両親がこの作品を厚みのあるものにしています。
フェイス
ベンジャミン・ゼファニア作
金原瑞人 訳
講談社:本体1000円
マーティンは平凡だけれど愛情たっぷりの両親と友達に恵まれ、元気で愉快な15才の少年です。悪ふざけといたずらとナンパが大好きな友達3人で出かけ、ちょっとした誘いに乗って自動車事故に遭います。酒とドラッグが絡み、運転していた若者は死に、マーティンは大やけどを負い、それは顔を変えてしまうぐらいで、決して治ると言うことのない傷になってしまいました。
著者は1958年、イギリス生まれの詩人、本の中にはグリーン・ストリート(アジア人社会)の事や、差別、人権の問題(障害者に対する考え)など、作者の思想が描かれているが、決して政治的ではなく、むしろ青春小説として読みたい。好きな女の子に去られ、10才ぐらいの子どもたちから正直だけれど残酷な仕打ちを受けてすっかり落ち込んでしまう場面など切ない。それにしてもマーティンに手を差し伸べる大人らしい大人がたくさん登場するのがとても印象深く思われます。15才ぐらいから。
ジェリコの夏
文ジョハナ・ハーウィッツ
訳 千葉茂樹
BL出版:本体1300円
1910年、アメリカでは都会に住む貧しい子どもが夏休みに田舎町で過ごすことが出来るフレッシュ・エア基金という制度がありました。ニューヨークで姉さんと二人きりで暮らしている12才のドーシは、この基金のおかげで2週間もバーモント州のジェリコに行くことが出来ました。 ミード夫妻とその2人の娘エマとエリナが受け入れてくれます。
そのドーシが描いた2週間の日記です。都会と田舎、宗教の違い、生活の違い、貧富の差、エマともなかなか上手くいきません。戸惑いながらもドーシには本当に大切な2週間になりました。作中、在野の雪の研究者だったベントレーとの出会いなども描かれています。
メイゾンともう一度
〜マディソン通りの少女たち3〜
ジャクリーン・ウッドソン
さくまゆみこ訳
ポプラ社:本体1600円
メイゾンはまた、マディソン通りに帰ってきました。そこは今まで通り親友のマーガレットがいて、おばあちゃんがいて、いつもメイゾンのことを気にかけてくれる人たちがいます。
でも変わったこともあります。顔も知らない父親が戻り、白人のキャロラインという友達ができ一緒にいることが多くなりました。マーガレットの父親は死んでしまったから決して戻っては来ません。マーガレットはメイゾンと気持ちが離れていってしまいそうになり、不安と寂しさから拒食症になりそうになります。メイゾンとマーガレットは自分を見失わないで人も受け入れていけるように、少しずつ大人になっていきます。
3巻完結。ぜひ若い人たちに読んでもらいたい作品です。


ロングセラーコース
■1コース・はじめに■2コース・2才位 から■3コース・4才位から■4コース・読み物と絵本■5コース・読み物

新刊コース
■A・小さな人に■B・4才ぐらいから■C・7才ぐらいから■D・10才ぐらいから■E・ヤングアダルトから大人まで


2001年度・新刊コース
■A・小さな人に■B・4才ぐらいから■C・7才ぐらいから■D・10才ぐらいから■E・ヤングアダルトから大人まで