■読者のページ〜2002年11月〜
この夏、私たち一家5人(夫婦+長男8歳+次男6歳+長女2歳)がカナダ、アメリカをモーターホームで旅した体験をお話します。

はじまり

5月のある日、サンフランシスコに長期出張している夫からFAXが届きました。「夏休みカナディアンロッキーとイエローストーン国立公園へモーターホーム(キャンピングカー)でまわる旅・ルート案1」長い題名です。そこには10泊11日の午前午後の日程がワープロで打ってありました。宿泊地は主にRVパーク(キャンプ場)とも書いてあります。私の頭の中は?でいっぱいです。目の前では3人の子どもたちが戦いごっこに熱中しています。

私達家族はアウトドア未経験。デイキャンプもなければ河原でバーベキューなんていうのもありません。夫が旅行の計画を立てたこともありません。アメリカに入って3ヶ月、何が彼をそうさせたのか……。

この計画を聞いた大半の人たちは「とても楽しそうだけど、大変よね。子どももお母さんも。」という感想でした。中には「この子たち3人連れて?」とあっけにとられる人、「すっごい面 白そう、絶対話聞かせてよ。」と珍道中間違いなしと変に期待している人もいました。

とにかく情報収集です。結果、アメリカはキャンプがとても盛んで16,000以上の公営・私営のRVキャンプ場があり、管理も行き届き清潔で料金もリーズナブルである、モーターホームは快適に生活ができる「動く家」であり、運転に特別 なトレーニングも必要無く普通免許でOK。などとありました。これは期待できるかも……。

国立公園は日本のそれとは大きく異なり「とっていいのは写真だけ、残していいのは足跡だけ」という環境保護が徹底して多くのボランティア、レンジャーによって守られている。その雄大で奥深い自然と野生動物を目の当たりにすれば人生観も変わる等など。すばらしいでしょ。

ただやたら熊に注意とあったのが少し(だいぶ)気になりました。そして「熊に襲われた車」という写 真を見たのです。人間が熊のテリトリーにお邪魔するのですから当然起こりうる事故なのです。分かってはいるのですが、「プーさんやウ−フに会える」と喜んでいる子どもたちを見ながら私の頭の中には「巨大な熊に襲われる子どもたち」の図がありました。図書館に行き「熊に出会ったときにどうするか」という本を借り、その中に「熊はペットボトルのペコペコいう音を嫌う」という文を見つけどんなにホッとしたことか。持ち物リストにペットボトル追加です。

そうこうしているうちに7月になり、夫とも電話やメールでのやり取りを重ね「とにかく子どもに無理のないよウに!」ということで途中2泊を国立公園内のホテルに変更、行程も1,000km以上削り最終ルート案が出来上がりました。さあ出発です。

モーターホーム

サンフランシスコに付いて2日目の朝、空路シアトルへ向かい1泊、さらにレンタカーで150km北の町べリングハムBellinghamを目指します。そこでモーターホームをレンタルするのです。

モーターホームとはいわゆるキャンピングカーです。2人用のコンパクトタイプから7〜8人が利用できる全長12m以上のバスタイプ、居住部分のトレーラーを乗用車で牽引するタイプ(トラベルトレーラー)など様々です。それらにはシャワー、水洗トイレ、キッチン、ベッド、ソファー、エアコン等が備え付けられてまさに「動く家」です。


もちろん日本で良く見られるように4WD、バン、ワゴンにキャンピング用品を積んでオートキャンプを楽しむ人たちもたくさんいます。

アメリカ人によるとモーターホームで旅行するのは「ハッピーリタイア」と呼ばれるお金と時間に余裕のあるシルバー層が多く、1ヶ月、2ヶ月と時間をかけてゆっくりと旅を楽しむそうです。

さて、今回私たちは「EL MONTE RV」という会社からレンタルしました。日本のJTBからもここのモーターホームを利用したツアーがあるそうです。そんなこともあって、幸運にもべリングハムの営業所には日本語のガイダンスビデオがありました。長男までメモ片手に真剣にビデオを見つめます。「このようにとても簡単にモーターホームの旅が楽しめるのです!」ナレーションでいとも簡単に説明も終了したのでした。


そして不安そうな私たちを営業所のおじさんがモーターホームへと案内してくれました。「うそでしょ……。」全長9m、高さ2mモーターホームクラスCロングタイプと呼ばれる巨大な車が現れたのです。普通 免許で乗ってはいけない大きさです。「いや〜、ホンマでかいな。運転できるかいな?」隣で夫がつぶやきます(彼は関西出身)。子どもたちは大喜びです。「お母さんすごいよ。ぼくんちよりずっと豪華だよ!」

たしかに豪華に見えます。クローゼット付きのベッドルーム。飾り縁のついた建て具、キッチンには電子レンジ、オーブンまであります。花柄のダイニングセットとソファー等など。


すると「This is your moterhome」とそこで改めておじさんが説明をしてくれるのでした。ホッとする私の横で夫がおじさんから説明を受けています。ジョーク(多分)を交えながら和やかにそれは1時間あまりも続き、旅行英会話程度の私にとっては子守唄のようにも聞こえました。子どもたちはその間せっせと自分たちの荷物を運び込み、ベッドでピョンピョン飛び跳ねています。昼過ぎ出発の予定がすでに午後3時を回っていました。

「大丈夫そう?わかった?」という私に「全然わからへん」という夫。確かに日本語であれだけまくしたてられたら大変でしょう。でもそんなことは言ってられません。だって「Have a good vacation!」とおじさんがにこやかに手を振っているのです。全員の乗車を確認。さあ、覚悟を決めて出発です。今日の宿泊地カナダのブリティッシュコロンビア州Hopeホープまで約200kmの道のりです。

イラスト/文・花山
つづく