■読者のページ〜2000年7月〜

本にまつわる映画の話〜『ユー・ガット・メール』と『耳をすませば』〜

ちょっと前の映画ですが、両方ともビデオで観れるようになりましたので、まだの人は是非観て下さい。

『ユー・ガット・メール』は、メグ・ライアンとトム・ハンクス主演のラブ・ストーリー。ニューヨークの児童書専門店が、近くにできた大型書店によって閉店の憂き目にあうというエルフのおばさんも涙なしには観れない映画です。この主演の二人は、前にも『めぐり逢えたら』という映画で共演しています。

『耳をすませば』は、おしくも最近亡くなった近藤喜文さんの監督、宮崎駿さんのプロデュース・脚本・絵コンテのスタジオ・ジブリ・アニメです。

月島雫という主人公が、県立図書館の貸出カード(その本にはさんであって、今まで誰がいつ借りて、いつ返したかが一目で分かる、司書が聞いたらエ〜ッというカード)で知った、名前だけの相手に恋をするというラブ・コミック。ちなみにこの貸出カードは学校図書館では珍しいものではありません。現に私が勤めている千葉県立M高校はこのシステムです。(ため息)このアニメには日本図書館協会が抗議したそうですが、脚本家は百も承知です。

でも、原作のマンガがこの設定で、しかも貸出カードがなければお話が始まらないという確信犯。いつ抗議したのかは、日本図書館協会に聞かなければ分かりませんが、映画の中ではちゃんと弁解しています。しかもストーリーを変えず、アニメ原画も最小限の追加で済ます知能犯。

映画に貸出カードが現れる直前のシーンは主人公と父親(某県立図書館司書という設定)の会話です。

『わが図書館もついにバーコード化するんだよ。準備に大騒ぎさ。』『やっぱり変えちゃうの。私、カードの方が好き。』『ぼくもそうだけどね……。』これだけです。

音声にはありませんが、この『……。』の後にはこんなセリフが入るはずです。『……プライバシーの問題もあって、そうはいかないんだよ。』もっと言えば、更に脚本家の弁解も入るはずです。『……もうこういうことは二度と起きないよ。』

つまり、これは過去の話で今の公共図書館ではこういう問題は起きないということです。更にこの映画は東京西部の地域がモデルですが、都立図書館だと一つしかありませんから、県立図書館としています。

この二つの映画には共通点があります。一つは男の方は女の正体が分かっているが、女の方は男の名前だけしか知らないという事です。もう一つは、女ふたりとも目の前に、現に『好きだ』と言ってくれる男がいるのに、まだ見知らぬ 男に、つまり恋に恋しているという事です。つまり二つの映画は全く同じ設定なのです。

アメリカ映画の方は、Eメールという近代的な小道具を使っていますが、ストーリーはご都合主義です。なにしろ最後に主人公は、自分の店を潰した大型書店の社長と結ばれるのですから。アメリカの小売店の実態、大型店と専門店の競争といった、日本にも共通 するこのテーマをもっと掘り下げてほしかったのに残念です。(児童書専門店の内装は本格的です。フェイスアウトの絵本の原書名を見ているだけでも楽しめます。)

そこへいくと日本のアニメの方が良くできています。ストーリーがしっかりしていて、『若い人に臆面 もなくエールを送って』います。将来への不安、何になりたいか、と考えることの大切さが描かれています。(クサすぎるという若い人の評もあるそうですが。)

そして画面の美しさ、ただの町の風景がこんなにきれいなアニメになるとは思いませんでした。下の子と一緒に何度ビデオを観たことでしょう。親子で絵本もいいですが(うまく選べば)親子で映画もいいですね。

(高橋峰夫)