| ★海からのおたより・16 〜2004年10月〜 西表島の漂木(ヒルギ) |
皆さんはこの夏、どこかの海にお出かけになりましたか?谷口ファミリーは8月25日〜28日まで沖縄県の石垣島、西表島(いりおもてじま)、竹富島に行って来ました。八重山諸島と呼ばれるこれらの島々は沖縄本島とは違い、琉球王朝やアメリカの影響が少ない、独特の自然と文化を持っている地域です。見るもの聞くもの食べるもの全てが「!」「?」の連続だった八重山旅行でした。夏休みが終わって子どもたちが登校するようになっても、しばらく私は壁に貼った美しい海の写
真を見ながらぼ〜っとしていました。写真の整理も採ってきた貝もそのままにして……。
西表島を訪れたとき、懐かしい風景を見ました、私たちは新婚旅行で12年前に一度訪れているのですが、昔の景色を思い出したのではありません。なぜだか千葉の白浜から千倉にかけての景色に似ているような気がしたのです。レンタカーを運転していたお父さんに聞いてみました。実は彼もそう思ったようで、道路の表示板には「白浜」とありました。生えている木も海も違うのですが……。2,000キロも離れたところでよりによって千葉を感じるとはなんとも不思議でした。すてきな八重山でしたが、帰ってきたばかりなのに無性に館山に行きたくなって出かけてしまいました。(帰宅後のぼ〜っとしていた生活も館山から帰ってきたらリセットされました)こういうのを原風景というのでしょうか。今回は西表島の「漂木」(ヒルギ)のお話です。
西表島は羽田空港から飛行機で那覇まで約2時間、那覇から石垣島まで飛行機で約1時間、更に石垣島から西表島まで船でおよそ1時間かかります。西表島から沖縄本島よりも台湾に行く方がずっと近いのです!特別
天然記念物のイリオモテヤマネコと東洋のアマゾンと呼ばれるジャングルが有名な島です。ちなみに西表島石垣島の間にはテレビドラマ「ちゅらさん」のえりぃのふるさとの小浜島があります。
| 水牛車で100メートルほど離れた由布島(ゆふじま)にわたりました。そこにはマングローブ(ヒルギ)を間近に見られる海岸がありました。マングローブとは熱帯・亜熱帯の海岸などで汐が満ちたときに海水に浸かる場所に生える木の総称です。海から山に向かって木の種類を変えてゆきます。千葉では台風の潮風が当たっただけで枯れる植物がほとんどですが、海の中に木が生えている光景というのには驚かされます。 |
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西表島は「海の中から森がはじまる」のだそうです。その言葉どおり汐の引いた干潟に生えていたマヤプシキ(マングローブの植物でも海に近いところに生える)の根元に大きな真っ黒な巻き貝がいました。「キバウミニナ」です。日本では八重山諸島だけに棲んでいる巨大なウミニナです。(殻の長さは10センチくらい)身体も真っ黒で少し不気味な感じがしますが、ヒルギ類の落ち葉を数匹ずつ固まって食べるおとなしい貝です。
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| 子どもたちが干潟の水たまりの泥を掘ってみると、手のひらほどもある「シレナシジミ」が出てきました。こちらも真っ黒で巨大な貝です。肉は意外に小さいそうです。彼らはマングローブの林の中に棲む天敵のノコギリガザミから身を守るために身体を大きくしたといわれています。これらは昔から島の人々の食料になってきました。 |
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地面からたくさんの芽のようなものが出ていました。これはマヤプシキの筍根(じゅんこん)と呼ばれる独特の根です。酸素のない海中の泥に根を張っているので、地面
の先から呼吸するため地表に根を出しているのだそうです。当然ながらそこからは芽は出てきません。近くを掘るとアサリの仲間のアラスジケマンガイなどが棲んでいました。この貝もアサリよりもかなり頑丈な殻を持っています。シオマネキなどのカニが近くに棲んでいるせいかもしれません。
サンゴの海は透明で澄んでいますが、栄養分が少なく生き物の数が多くありませんでした。山からの栄養分はマングローブがフィルターの役目をして濾過してしまうのだそうです。その入り組んだ根元にはたくさんの生き物が棲み、ゆりかごになっているといいます。波音もない静かな干潟の海は通
り過ぎたばかりの台風の影響を感じることもなく、ゆっくりと時間が流れているようでした。
マングローブを琉球の人はヒルギと呼んでいました。「漂う木」と書いてヒルギ。私たちはその「こども」を拾いました。30センチほどの茶色の若い枝のような「たね」です。
ヒルギ科の植物は「胎生種子」と呼ばれる「種から芽生えた苗木をぶら下げている」そうです。満潮時に水に落ちて条件の整ったところに運良く流れついたら苗は育つことが出来るのです。「ペットボトルに挿しておくと根っこが出るよ」と観光船乗り場のおばさんに教えてもらいました。
家へ帰ってから2週間するとペットボトルに挿した苗はわずかに根が出て、4週間後、先の方から葉が伸びてきました。海岸で拾ったとき、最初はどちらを上にして挿したらいいのか分かりませんでしたが、水の中に落としてみるとちゃんと一方が立つのです。どうやら、根が出る方を下にして木にぶら下がっていたようです。水の上を漂いながら子孫を増やすヒルギ。すばらしい智恵です。 |
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貝殻がどうしても欲しくて採ってきたキバウミニナですが、子どもが採ってきたままビニール袋に入れたまま洗面
所のすみに置いてありました。さすがに1ヶ月経ったので私が洗って乾かしました。しばらくすると殻の口から泡が……?なんとヤドカリが入っていたのです。いやな予感がして私のキバウミニナを(これもそのままにしておいた)水につけてみたら……な、なんと生きていました!1ヶ月間飲まず食わずで。私は普通
、生きたものの採集はしないのですが今回は1つだけ採ってきたのです。驚いてキャベツと人工の海水を入れてバケツで飼ってみることにしました。食べられる貝ではありますが、さすがに食べる気にはなりませんでした。
さっそく千葉県立中央博物館に話を伺いに行きました。ヤドカリが水のない袋の中で1ヶ月間生きていたのには先生方もびっくりされていました。ヤドカリは砂の有機物を食べているそうなので、水槽に砂を入れ砂山を作って貝も一緒に入れてみることにしました。ヒルギはまだ育っていないので、ウミニナにはキャベツで我慢してもらっています。干潟の暑さと乾燥に強いという彼らの生命力は大したものです。大事に飼って帰してやりたいものですが、八重山は遠すぎる……。いつになることか分かりません。その前に家の中にミニマングローブが育っているかも?
まだまだ紹介したいことはたくさんあるのですが、八重山のすばらしい自然はこちらの「海辺の漂本箱」をご覧になってください。石垣島でお会いしたHPの作者のK氏はプレゼントした千葉のタカラガイを珍しそうに見ておられました。黒潮が八重山から房総半島まで流れてきているのかと思うと千葉ポートパークの海もステキに見えてきました。それにしても真夏の日差しは暑すぎました。今度行くときは冬がいいな〜。
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