★海からのおたより・15 〜2004年9月〜

九十九里の地曳き網

九十九里浜は砂浜が続く海岸です。実際には九十九里(約400キロ)より短く、70キロほど(十八里)だそうですが、見渡す限り砂浜が続く風景は壮観です。最近では東京に最も近く、安定した高い波に乗れる、ということでサーファーたちに人気があります。

私たち家族は7月24日に千葉県立中央博物館主催の動物観察会「地曳き網でとれる海の生きもの」に参加しました。午前8時に家を出発、40分ほどで九十九里町の真亀海岸に到着しました。国民宿舎「サンライズ九十九里」の前の浜です。連日の猛暑でさぞ暑いかと思っていたら、意外や意外、朝の海には霧がかかっていて風もあり、海水浴客もまばらでした。

網元の休憩所で博物館の先生から説明を聞いた後、すぐ目の前の浜に出ました。網元のおばさんが「このところ穏やかな日が続いているからコアジがいっぱい獲れるよ」と話してくれました。期待が膨らみます。(案内には「マアジが数百Kg獲れたことがある」と書いてありました。)波打ち際で「カニが走ってる」とおばさん。海に飛び込む子どもたち。地曳きの前にモクズガニをゲット!大漁がますます期待されます。

まず、トラックが船を乗せたまま海に入ります。船はそこから網を引きながら沖に向かい、弧を描くようにして浜に戻ってくるのです。浜では網につけてある縄を両方からみんなで曳きます。参加者は2つのグループに分かれて網を曳きました。博物館の先生も、おじいちゃん、おばあちゃんも。縄にぶら下がっている子どももいて大騒ぎです。ところが、力いっぱい曳いても曳いても網が見えません。何しろ網は500メートルもあるそうです。4・5回ほど浜を往復した後、網の幅を狭くしてまた曳きました。するとようやく網が見えてきました。魚がはねているのが見えます。「あれ?これだけ」寄せた網の中に小さな魚がたくさん見えましたが、アカエイやサメがかかると聞いていたのに……。下の方にいるのでしょうか。アジはどこへ行ったの?正直言ってちょっとがっかりでした。大きめの入れ物に3つ。収穫した物は全て持ち帰って休憩所で解説を聞きました。この頃にはすっかり霧は晴れて、夏の青空になっていました。


網の幅を狭めます
網の先は袋状になっていて
魚を追い込みます
収穫を観察
地曳き網で獲れた物

魚類
マアジ ボラ カンパチ カタクチイワシ コノシロ(コハダ)
クサフグ  センニンフグ クロウシノシタ ニベ(イシモチ) ヒイラギ
その他
モズクガニ アオリイカの子ども アカクラゲ サトウガイの殻
ツメタガイの殻 クサコケムシ ハスノハカシパン など  

取れたての新鮮な魚を種類別に分けて観察しながら先生方の解説を聞きました。私たちが日頃よく食べるシラスや煮干しはカタクチイワシの幼魚です。マイワシと口の形が違うことで区別されるそうです。(名物のイワシのごま漬けもカタクチイワシ)

しっぽを切られたアカエイ
まだ生きています。
手前のエイは子どもを持っているようです。

クサコケムシ
これも海の生き物です。

どの魚も図鑑より透き通った色をしてピカピカ光っていました。みんな「にじいろ」なんですよ。40センチほどのボラは(1番大きな獲物でした)動くと鱗が飛んで子どもたちは大はしゃぎでした。ほとんどの魚は海からあげるとすぐに死んでしまいました。「ぬるぬるするよ」と参加の子どもたちは魚をいじくり回していました。でも新鮮なせいか生臭さはそんなになかったようです。フグの仲間は(赤ちゃんでしたが)ぷくーっとお腹をふくらましていました。フグは刺激すると水の中では水を、陸にあげると空気をお腹に入れてふくらみます。小さくても毒があるので食べられません。観察の後はみんなで収穫した魚を分けました。

今回は、夏の地曳き網では収穫が少なかったそうです。「網が海底に沈んでから曳くところ、沈む前に曳いたようだ(曳くのが早かった)」とある先生がおっしゃっていました。それでも、普段九十九里浜で遊んでいても見ることのできないたくさんの魚を見ることができて楽しかったです。別のグループでは大きなアカエイが網にかかりました。アカエイはしっぽに毒針があるのですぐに切り落とすそうです。食べるとおいしいそうですが、浜に置いていってしまいました。船を片づけていたおじさんが「これに刺されたら1秒も立っていられない」とすねの傷跡を見せてくれました。刺されて亡くなることもあると本にはありました。自然との付き合いは収穫を喜んでばかりいられないのです。

観察会の後は子どもとお父さんは海水浴をしました。流れが速いので、この日は「遊泳注意」でした。旗と旗の間が海水浴場だそうですが、浜の幅が30メートルほどでとても狭く、安全に遊べる浜を管理するのは広い九十九里浜では大変なようです。遠浅で波がある九十九里は泳ぐ海というよりも遊ぶ海です。パラセイリングなどのマリンレジャーが盛んです。

一日遊んでお腹が空きました。今晩のおかずは今日収穫した魚です。大きいのがカンパチ、イシモチ、マアジ……。いずれも幼魚です。カンパチ以外は開いてそのまま天ぷらにして食べました。三枚に下ろしたら食べるところがなくなりそうです。でも、自分たちで摂った魚は格別でした。

数十年前まで九十九里から銚子にかけては日本一のイワシの漁場でした。地曳き網は16世紀半ば、紀州の漁師が九十九里浜に広めたといわれています。長い間イワシからつくられる「ほしか」は農作物の肥料として高値で取り引きされました。戦後、魚群探知機などが発達して漁も大規模になって、地曳き網はおもに観光用になりました。千葉県内では地曳き体験ができる海岸がたくさんあります。ぜひ一度、海と綱引きして収穫の喜びを経験してみてください。

どんぐりつうしん変集長
谷口優子
e-mail:taniguchi-donguri@nifty.com