★海からのおたより・1 〜2003年2月〜

私は浦和出身で北海道・函館市出身の夫と結婚して7年ほど宇都宮に住んだのち、千葉県館山市に転勤。1年半で千葉市に転勤になりました。この頃から貝のコレクションが趣味です。身近にすばらしい自然があることを少しでも紹介できたらすてきだな、と思っています。

年が明けると南房総の館山周辺は花の季節になります。菜の花やポピー、ストックなど、大寒でこちらはブルブルしているときにもう春が来ています。

そんなイメージで出かけられた方は行ってみて意外と寒い、とお感じになられることでしょう。“常春・たてやま”を夢見ていたのに……。私も3年前にその期待が外れました。館山の生活は厳しい自然との共生でした。夫の転勤ではじめて海辺の街で暮らし、子どもたちと自然を楽しんできた“たにぐちファミリー”が経験した館山をほんの少しご紹介いたします。

同じ千葉県でも“鋸山を越えると肌着一枚違う”といわれるように南房総の昼間はとても暖かく空の色も海の色も違います。しかし夜から明け方の冷え込みは厳しく、千葉市よりも館山市の最低気温が低くなることも多いようです。

花畑の広がる海沿いは無霜地帯ですが、この季節、強い西風に悩まされます。地元では“大西”と呼んでいますが、ひとたび吹けば細かい砂まじりの海からの風は物干し台を倒したり、家の雨戸は開けられないほどの大風になります。

海は荒れて深い緑色に変わって白波がたち、舟は漁に出られません。冬の房州では大西は三日に一度は吹くといわれています。富浦町にある金気神社は風を鎮める神様として信仰を集めているそうです。

(住んでいた家の近くの畑で
足元からは6,000年前の隆起したサンゴが出てきます)

大西がやんだ凪(なぎ)の浜辺に出てみると、それはすばらしい海からの宝物に出会うチャンスです。そんな日は浜辺のつづくN海岸にさくら貝を拾いに出かけます。

汐の引く時間を新聞で調べて、波の穏やかな砂浜の波打ち際をゆっくりと歩いていきます、「ビーチコーミング」とかはたまた「磯乞食」と呼ばれるいわゆる“浜歩き”をして貝などのお宝を探すのです。


サクラガイの仲間はまるで赤ちゃんの爪のようにうすいピンク色の貝です。見つけると大切にハンカチやタオルにくるんで持ち帰ります。

波間に漂うさまはさくらの花びらか蝶かというほどに本当に美しいものです。
冬から春にかけてこの貝はたくさん拾うことができます

カバザクラ(樺桜)サクラガイ(桜貝)ベニガイ(紅貝)

館山・冬の味覚

冬の館山は向こうに雪の富士山が見え、最高の景色になります。岩場の磯では「はばのり」を採る人をしばしば見かけます。

千葉市内でもお正月にはスーパーに並ぶのでご存じの方も多いかと思いますが、大変高価なのりです。5枚で3,000円ほどします。

「はばをきかせる」というわけで、お雑煮に軽くあぶったものをかけるようです。普通 ののりよりも磯の香りがします。館山市内では季節になると「新はばあります」の貼り紙が店に貼られるほど人気があります。


「なまだ」これはあまりポピュラーではありませんが、これも冬のものです。なまだ=ウツボ、といったら誰もがびっくりするでしょう。海のギャングのあのウツボです。房総半島の最南端付近で干物にされています。ウツボは冬に脂がのっておいしくなるといいます。
北条海岸から見た冬の富士山

試しに食べてみたら確かに脂がのって味は良かったものの、小骨が多く食べにくく、あの独特の縞模様の皮が厚いのなんの。頭はついてなかったけれども、面 の皮の厚さはさすが。1枚800円から。九州、土佐、南紀白浜から黒潮にのって伝わってきた食習慣といわれています。ガイドブックとは違うスローライフたてやまを楽しんでいただけたらと思います。

館山の話を書いていたら無性に館山に行きたくなって、土曜日に日帰りでしたが行って来ました。

風がなく汐も大潮で絶好の貝拾い日和でした。さくら貝を拾ってきました。空の色がこんなに明るいなんて。住んでいたときは気づかなかったことも、またこちらでは忘れていたことも思い出されて、やっぱり時々遊びに行きたいな〜と思いました。

南房総とっておきのはなし・元朝桜

館山から外房・鴨川に向かう途中に和田という捕鯨で知られる街があります。そこに2月に満開になる桜があります。

大正時代、南房総で花の栽培をはじめた間宮七郎平氏が故郷に「抱湖園」という私設の植物の試験場をつくり、河津桜を植えました。北風のあたらない山の斜面 に植えられているので、ここの桜は2月に咲くのです。旧暦元日の朝に咲きはじめるというので「がんちょうざくら」と呼ばれています。2002.02.24 昨年は早かったのでこの1本しか残っていませんでした。ソメイヨシノより大きくてピンク色が強いです。

眼下にはお花畑、その向こうには外房の海が広がり、すばらしい風景です。その昔山間の村から花嫁が海辺へ嫁ぐときに歩いたといわれる「花嫁街道」もすぐ近くです。

春の一日、ハイキングしてみてはいかがでしょう。

どんぐりつうしん変集長
谷口優子
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