ベトナム便り〜2005年5月〜

これまでの連載を読んでいただいた方には、ある程度、水上生活者の暮らしぶりを理解していただけたかと思います。そこで今回は、彼らの仕事の状況を、もう少し詳しく説明します。

★続かない仕事


これまで、何人かの子どもたちの仕事をレポートしました。ごみ集め、窓枠作り、お供え用の飾り作り、市場での日雇い……。その他にも、お菓子の包装、紙の染色、ベビーシッター、宝くじ売りなど、様々な仕事をしている子どもがいます。しかし、重労働のわりに低賃金だったり、長時間の単純作業を強いられる仕事は、長続きしないことが多いようです。実は、1月号で紹介したティエン君も1ヶ月で仕事をやめています。

★ゴミ集め:楽しい宝探し

ティエン君の現在の仕事は、ゴミ集めです。お祈りの時に使う飾り作りの仕事をする前も、ゴミ集めをしていました。不衛生で、収入も不安定なゴミ集め仕事。それでも、子どもたちは、ゴミ集めの仕事に戻っていきます。その最大の理由は、「友達とおしゃべりしながら、歌を歌いながら、楽しくできる仕事だから」です。

その日の出来が悪くても、上司に怒られることはありません。ごみをあさって、大人たちに怒られることはありますが、笑ってその場を立ち去るだけです。また、悪天候や体調不良を理由に、自由に仕事を休むこともできます。(自分の収入が一家の支えとなっている子どもは、熱心に働いていますが。)そんな、気ままな仕事、ゴミ集め。ゴミ集め用の袋がほとんど空っぽでも、子どもたちは今日も楽しそうに街を歩き回っています。
シクロを使うこともあるゴミ集めの仕事

★ゴミ集めではなく……

裸足でゴミ集めをする子どもたちが、観光都市フエを歩き回る。この状況に対し、政府や援助機関は数多くの取り組みをしてきました。その一つに、職業訓練所の設置があります。数年前から、貧困層の青少年を対象とした職業訓練(洋裁、刺繍、パソコンなど)を行ってきました。訓練期間が短いことや、その後の就職先が見つからないことなど、いくつか問題はありますが、子どもが「やりたい仕事」を見つけるためのきっかけとなっているようです。

男の子も洋裁の訓練に熱中

★家族で仕事


こうして自分の仕事を選ぶことができる子どもたちは、貧しいといえども、良いほうです。中には、夜中の3時から、家族と重労働に出かけなければいけない 子どもたちもいます。砂利採取の仕事をしている子どもです。

砂利採取は、川底から砂利をさらい、船に積み、建築現場に運ぶ仕事です。川底から砂利を引き上げるには、滑車を使います。ペダルをこいで滑車を回すのですが、これは大変な重労働で、足を痛める人もいるほどです。そして、(最近は機械化されつつありますが)船から岸に砂利を運ぶ仕事もあります。天秤を使って、重い砂利を運ぶので、今度は肩に瘤ができます。

船に積んだ砂利を天秤で岸に運ぶ

問題は、この重労働だけではありません。砂利採取は、明け方から午前中にかけて行われます。そして、昼休みを挟み、午後は、船から岸に砂利を運ぶ仕事に移ります。こうして、昼間はずっと仕事をしなければいけないため、子どもたちは学校に行けません。

まだ体力的に働けない年齢の子ども(14歳以下)も、この仕事についていきます。砂利採取用の船が彼らの住居だからです。

最近は、砂利採取が政府によって規制されているため、この仕事をする水上生活者は減っていますが、それでもまだ、砂利採取の仕事のため学校に行けず、夜間の識字教室で学ぶ子どもがいます。写真のセンさんの長女もその一人です。

センさん(右)長女(後ろ)長男(中)

センさんは、この仕事が子どもたちの教育機会を奪っていることを理解しています。しかし、「家族が食べていくために、この仕事を続けなければ」と言います。子どもが将来、安定した職につくために、教育を優先させるのではなく、収入が不安定でも、自分が今できる仕事を続ける。そして、砂利採取ができなくなったら、政府が他の仕事を紹介してくれるのを待つ。ほとんど教育を受けていない親たちは、より安定した収入を得るための転職をあきらめ、ぎりぎりの暮らしで今の仕事を続ける。これが多くの水上生活者の状況です。

私は、身動きが取れなくなっている彼らの苦しい状況を理解しているつもりですが、「その日、食事ができる分だけ働けばいい」というのではなく、「将来の暮らしを良くするために働く」、つまり、長期的視野で家計を考える必要があるように思います。これは、口で言うのは簡単ですし、親たちも分かっていることです。しかし、その日暮らしでずっと生きてきた彼らにとって、意識を変えることは、とても難しく、時間がかかることです。それも彼らは分かっています。耳が痛くなるほど何度も聞いた「生活改善」。

まずは、「なぜ生活改善が必要なのか」を考える機会を作り、その解決策を彼らに提案してもらう。そのようなきっかけ作りを、私は進めています。「言われたことをやる」のではなく、「自ら考え、責任を持って行動する」。これには水上生活者の大きな努力が必要とされますが、彼らが前に進むために必要なステップなのではないでしょうか。

★今月の行事:韓国写真

4月の一大行事と言えば、4月30日のベトナム開放記念日です。全国的な休日でもあり、3月末のフエ開放記念日よりもさらに大きな式典が全国各地で開催されます。しかし、それよりも皆さんに伝えたいことがあります。

行事というより、“今月のブーム”ですが、 フエの学生の間で爆発的に流行している「韓国写真」です。 何だか分かりますか?実は、プリントクラブ(プリクラ)です。日本ではもうあまり見かけなくなりましたが、フエでは、最近、急に流行りだしました。日本製の機械を使っているにも関わらず、「韓国写真」と呼ばれるプリクラ。「韓流」は日本だけで起こっている現象ではないようです。
プリクラのフレームを選ぶアオザイ姿の女学生
古関 陽子 y_koseki@hotmail.com