ベトナム便り〜2005年3月〜

★電気の話


先月号は、“水の話”だったので、今月は、“電気の話”です。「船上で暮らしているのに電気なんてあるの?」と思う方がいるかもしれませんが、7割以上の水上生活者が電気を利用しています。また、4割近くがテレビを持っています。やはり水上生活者にとっても、テレビは魅力的な娯楽の一つなようです。人気のテレビ番組はというと、日本と同じように、韓国ドラマ。実は、日本よりも早く韓国ドラマが進出していて、「冬のソナタ」は3回も再放送されたとか。ホストファミリーも、友人も、水上生活者も、昼食、夕食時には、食事そっちのけでテレビドラマに夢中です。

★AV機器に囲まれた船上生活

組リーダーのディンさんの家にもテレビがあります。中古の日本製で、知り合いから60万ドン(約4,000円)で買ったそうです。テレビだけでなく、ビデオCDプレイヤー、スピーカーまであり、水上生活者の中では、比較的豊かな家庭と言えます。

先日は、ディンさんの長女と次女が船に招いてくれたので、女3人で、好きなテレビ番組や歌手の話をして、盛り上がりました。彼女たちは、ベトナムでも放送されている日本のテレビ番組“お母さんといっしょ”(NHK)を観て「日本の子どもは賢いねぇ。」なんて言っていました。
姉妹と電化製品

姉のゴックちゃん(写真右)は、病院の食堂でウェイトレスをしています。妹のマイちゃん(写真左)は、ダナン(100キロ離れた商業都市)で3年間の出稼ぎを終え、家族のもとに帰ってきたばかり。借金を返済できたので、しばらく働かずに、ゆっくり休むそうです。今は、家事手伝いをしながら、識字教室に通っています。「家に帰ってこれて嬉しい!」と笑顔で話す彼女は、18歳とは思えないほど、あどけなさが残る女の子です。「妹はまだ恋愛を知らないの。男の子を嫌うくらいだから。」と言う、恋愛ドラマを観すぎ?なお姉さんの発言に、はにかむマイちゃん。いいコンビの姉妹で、うらやましくなってしまうほどです。

姉妹

★電気代


話がずれてしまいました……。電気の話に戻します。誰もがあこがれる“電気のある生活”ですが、やっぱり気になるのは電気代。ベトナムの場合、毎月の使用量に応じて、1kwあたりの料金が決まります。つまり、使えば使うほど、1kwあたりの料金が高くなるのです。一般家庭で使う場合は、最低額の650VND/1kwで十分。しかし、水上生活者は、川岸の家から電線を引いて、電気を分けてもらうため、料金が割り増しになり、2,000VND/1kw払わなければいけないこともあります。

ゴックちゃんの家では、1,500VND/1kw払っているそうです。そして、毎月の電気代は約5万ドン。暑い乾季は扇風機を使うので、もう少し高くなるとか。川岸の家から電線を引くのではなく、電気メーターを買って個人契約すれば、電気代は安くなります。しかし、漏電の危険性があるため、電力会社はなかなか船に配電してくれません。ディンさんの組では、電力会社に直接交渉に行き、一部の船に電気を引いてもらえることになったのですが、工事が遅れていて、まだ正規料金での配電は実現していません。しかも、個人契約をするには戸籍が必要なため、半数近くの世帯は、隣の船から分けてもらうことになりました。

電線工事

★戸籍がないと……。


こうして、公的な契約をするときに、戸籍の問題が出てきます。一隻の船に一つの家族が住んでいて、一つの戸籍を持っていると考えるのが普通ですが、実際は、数隻の船に三世代十数人が住んでいるのに、一つの戸籍しかないケースが多くあります。“戸籍が増えれば世帯が増える。世帯が増えれば用意すべき定住地が増える。”この考えから、水上生活者は戸籍を分けることを制限されているのです。

戸籍があれば、まだいいほうです。中には仮の戸籍(KT3)しか持っておらず、一年間の有効期限が切れている水上生活者もいます。戸籍登録は難しいですが、仮戸籍は、簡単な手続きでできるので、私は、調査の際に、有効期限切れの仮戸籍を見つけると、更新を呼びかけています。行政側は、戸籍を持っていない人もきちんと把握していて(これがベトナムのすごいところ!)、統計からもれているなどという事はないのですが、やはり、公的な契約(電気、土地購入、就職など)をするときには、障害となります。生まれたときから戸籍に入っている私には、想像もできない実態でしたが、水上生活者の将来を考えると、重大な課題といえます。土地の住民として認められ、堂々と生活することは、“自分の将来を変える自信”につながるからです。みなさんは、戸籍を持っていない生活を想像できますか?
戸籍謄本だけじゃなくて、私も撮って

★今月の行事:テト


今月の行事は、何と言っても“テト”(旧正月)です。テトに何をするかと言うと、私にとって一番重大な任務は、先月号にも書いた“挨拶回り”です。今年は何と30軒もまわりました。行く先々でおつまみを食べながら、フエの地ビールをちぴちぴ。こんな時、お酒が苦手な私は、「軽いビールが主流のフエで良かった」と心から思います。農村では、アルコール度数の高い地酒を飲まされるそうです。おつまみはソーセージなどの肉類か、甘〜いお菓子。一日中食べ続けるので、胃がもたれます。
同僚との挨拶回り

ベトナムにもお年玉があります。子どもたちにとっては、これが一番の楽しみのようです。しかし、もらえる金額は家によって違うため、計100万ドン以上もらう裕福な家庭の子がいる一方で、水上生活者の子どもは、数千ドンしかもらえません。また、10歳以上は、お年玉をもらえないそうです。20代後半の私は、職場や友人からお年玉をもらったのですが……。天気に恵まれた今年のテト。子どもたちは、外で元気に遊んでいました。
今年も元気に!
古関 陽子 y_koseki@hotmail.com