ベトナム便り〜2004年12月〜

★洪水だ!

フエで暮らし始めてから1年3ヶ月が経ちましたが、 初めて本格的な洪水を体験することになりました。この文章を書いている間にも、大きな音を立てながら 雨が降り続き、川の水かさが増していきます。(そして、ただいま停電になりました……。)

フエは、昔から、洪水に悩まされてきた街です。川の中流に位置する盆地のため、洪水が起きやすいのです。 最近では、1985年と1999年に大洪水が起きました。特に1999年の洪水では、1.5m近く冠水した家も多く、 400名以上の死者が出たという話しです。(特に水上生活者。)

★洪水対策

水上生活者は洪水や台風の危険性が高まると、まず風にあおられないように支流に非難します。そして、流されないように電柱や木などに船を固定します。

あとは、船底に溜まる雨水を、外に出す作業を頻繁に行い、雨が止むまで、じっと船の中で待つだけです。水を外に出す作業は、雨が降らない日でも、定期的に行う必要があります。老朽化が進み、船底に小さな穴が開いている船は、数時間もすれば、水が溜まってしまうからです。この作業を怠ると、船が沈没する危険性が高まります。


川岸に打ち寄せられた船

水をすくうのには、なんと“旧米軍のヘルメット”を使います。

帽子のつばの部分を削り、木の棒で取っ手をつけたものです。「旧米軍のヘルメットは頑丈で、30年使っても壊れないんだ。」という彼らの言葉に、複雑な心境になりましたが、と同時に、彼らだからこそ、あの戦争を勝ち抜くことができたのだと思いました。

たくましい子どもたち

そして、今回の洪水でも、私は、水上生活者のたくましさを痛感することになりました。初めての洪水に興奮した私は、徒歩で水上生活者の様子を見に行ったのですが、そこで遭遇したのは、腰まで水に浸かっても、ゴミ拾いをする子供たち。

彼らは、私がよく行く識字教室の生徒でした。いつもより大きく膨らんだゴミ袋を背負い、笑顔で私の写 真に応えます。濁流に流されることなく、しっかりとした足取りで船に帰っていく彼らは、橋の上から見守ることしかできない私の目に、いつもより、さらにたくましく映りました。

貴重な食糧

水上生活者を見に行った帰り、道端で人だかりを見つけました。近づいてみると、魚を売っています。やはり、洪水の時に一番心配なのは食糧です。フエ市最大の市場であるドンバ市場は、修羅場と化しているこもあり、行商の魚売りはいつもより繁盛しているようでした。(価格は割高)

行商は魚売りだけではありません。おこわもサンドイッチもドーナツもいつものオバちゃんが売りに来ます。おそらく、彼らは腰まで浸かっても売りに来るでしょう。商店はほとんど休業していますが……。

今月は急きょ、洪水特集をお伝えしました。来月は、わんぱくな男の子が登場する予定です。

今月の行事:先生の日

11月20日は先生の日です。この日、教育機関は全て休校になります。そして、生徒たちは恩師の自宅を訪問し、花やプレゼントを贈るのです。「先生は、自分にないたくさんの知識を与えてくれる尊敬すべき存在」だとベ、トナム人の友人は言います。そして、「こんな大切な日が、日本にないのはどうして?」と聞かれます。

実は、私も、この日は祝われる立場にありました。先月号に書いた修道院で、日本語を教えている“先生”だからです。

ベトナムで生活していると、日本語教師を頼まれることは少なからずあるのですが、仕事が忙しいことを理由に、断り続けていました。しかし、修道女たちに頼まれたときは、さすがに断ることができず、1ヶ月半前から、教えることになったのです。先生の日には、花と果物をいただき、とても楽しい時間を過ごしました。

そして夜は、識字教室の生徒たちと、折り紙で花を作り(茎はストローで)、識字教室の先生の家に届けに行きました。先生は大変喜んでくださり、歌合戦をして、最後には記念撮影。授業中は厳しい先生の顔が、この日はとても穏やかだったのが印象的です。大きな花束は買えないけれど、先生が喜んでくれれば、それで十分なのです。

古関 陽子 y_koseki@hotmail.com