ベトナム便り〜2004年11月〜

トゥイは14歳。ちょうど去年の今頃、識字教室で出会いました。その後、私が水上生活者にインタビューをしていると、知らぬ間にいつも横に座っていたトゥイ。なかなか通じない私のベトナム語をすばやく理解し、言い直してくれる、ベトナム語からベトナム語への通訳でもあるトゥイ。

私が、そんなトゥイと知り合って、もう1年経ちましたが、よく考えてみると彼女の生活について、家族について、尋ねたことがありませんでした。そこで、トゥイの生活を追ってみたところ、新しい発見がたくさんあったのです。


最近、自分で前髪を切ったトゥイ

★船でお留守番の毎日


大抵、水上生活者の子どもと仲良くなると、船に呼ばれ、その子の家族とも話しをすることができます。しかし、私は今までトゥイの家族に会ったことがありませんでした。「ご両親はどんな仕事をしているの?」と聞くと、「ちょっと離れた村で植木の栽培をしている。」との答え。「じゃあ何時に帰ってくるの?」と聞くと、「テト(旧正月)まで帰ってこない。」という。旧正月は2月中旬。どういうことなのか詳しく聞いてみると、ご両親は、泊り込みで植木の栽培・管理をしているとのこと。そして、トゥイは両親に代わって、船を守っているのです。昼食は自分で作り、1人で食べ、夜は、2人のお兄さんが帰ってきて子どもだけで寝るのだとか……。「両親と一緒に眠れないのは、寂しくない?」と聞くと、「寂しいよ。でも、しょっちゅう両親のところに遊びに行くから大丈夫。明日、一緒に行く?自転車で行けば、あまり遠くないよ。」というわけで、次の日、トゥイを自転車の後ろに乗せて、ご両親に会いに行くことにしました。3つの橋を越えて……。迎えてくれたのは、トゥイと同じ顔したお母さん。お兄さんもそっくり!

★家族の仕事

トゥイのお母さんは以前、市場で荷物運びの仕事をしていました。重い天秤を担ぎ、市場を歩き回るため、体力的にきつく、2年前から、1年のうち半分は、泊り込みで植木の栽培をする仕事を始めたそうです。子どもを船に残すことは、やはり不安なようで、「大雨が降った日は心配で、船に様子を見に行く。」と言っていました。しかし、子どもと離れて暮らすことになっても、家族を養うための仕事は続けなければなりません。「トゥイには、いい仕事について欲しい。」とつぶやく姿が印象的でした。

洋裁教室

トゥイは、小学2年生まで学校に通い、9歳から母親の仕事を手伝うようになりました。休学の理由は、家が貧しくて学費を払うことができなかったから。そんなトゥイが、数ヶ月前から、洋裁の職業訓練所に通い始めたというので、様子を見に行くことにしました。教室は何と修道院の中にあり、先生はシスターです。生徒は、全員女の子で、37人。水上生活者は2人だけで、あとは貧しい家庭の子どもたちです。中には、自転車で1時間以上かけて通っている子もいます。ここでは、修道院が用意してくれたミシンと材料を使って、型紙をおこすところから学ぶことができます。就職口は自分で探さなければなりませんが、これまでに約50人の生徒が職を見つけ卒業したそうです。

そして、完成した服は山岳少数民族に寄付されます。貧しい子どもたちに職業訓練の場を提供すると同時に、少数民族の人たちに服を寄付するという活動に、私は深い感銘を受けました。今度は、少数民族に会いに行きたいです!

識字教室


平日の夜7〜9時、トゥイは識字教室に通っています。通い始めてから、4年が経ちました。生徒は20〜30人で、そのほとんどが水上生活者です。多くの生徒は、昼間はゴミ拾いなどの仕事をしていて、トゥイのように、職業訓練を受けている子どもは少数です。授業は、ベトナム語(書き取りと読み)と計算。先生は人民委員会の職員であるフォン先生です。授業は、教科書に沿って、先生が一方的に進める形式なので、これでは少しつまらないのでは?と思い、私は、日本の切り紙や折り紙を教えることにしました。折り紙で魚を折りながら、「今日は魚食べた?魚の名前いくつ言える?」などと質問したりしながら。また、私がリコーダーを吹き、子どもたちが歌を歌うこともあります。みんなとても元気なので、体力を奪われますが(笑)、彼らの笑顔を見ていると、不思議と「もっと楽しませたい!」という気持ちが湧いてきます。

トゥイと私


うまく話せないベトナム語での調査は、私にとって大変な仕事です。それでも続けていけるのは、調査の合間で会う子どもたちの笑顔がエネルギーになっているからかもしれません。トゥイの笑顔も私にとって大切なエネルギーです。そして、彼女が学ぶ姿を見ていると、将来どのような大人になるのか楽しみです。きっと、素敵な洋服を私に縫ってくれるでしょう!

今月の行事 婦人の日

ベトナムには婦人の日が年に2回あります。3月8日は国際婦人の日。そして、10月20日はベトナムの婦人の日です。この日、男性は女性に花を贈り、つくさなければなりません。(笑)「日本には母の日と、女の子の日(ひな祭り)はあるけど、婦人の日はない。ベトナムには婦人の日が2日もあっていいね。」と同僚の女の子に言うと、「なーに言ってんの!363日は男性の日よ。」と言い返されてしまいました。こんな時、ベトナム女性の強さを感じます。

途上国の中には、女性の社会的地位が低く、それが貧困要因の一つとされている国もありますが、ベトナムでは逆に、日本の男性優位 社会を非難されることが多いです。ドラマ“おしん”の影響か、「日本では、奥さんが旦那さんの靴を磨いたり、家事を全部やるんでしょ?ベトナム人のお嫁さんになる方が楽よ。」なんて言われたりします。それは相手にもよる気がしますが……。

今年の婦人の日は、水上生活者に誘われて、婦人会主催の「日帰り温泉旅行」に参加しました。温泉といっても、日本のような「肌がツルツルになる温泉」ではなく、「肌が荒れそうなほど汚れた温泉」ですが、フエでは人気の娯楽施設の一つなのです。私はこの温泉にもう5回も行ったので、温泉自体には少々うんざりしているのですが、水上生活者なのに泳げないことが分かったり、楽しい一日でした。

古関 陽子 y_koseki@hotmail.com