ベトナム便り〜2004年10月〜

雨季の気配を感じるフエからの便りです。今回から、水上生活者の子どもの暮らしを紹介していきます。記念すべき第一回目は ホンちゃん(12歳)。漢字を当てると「紅ちゃん」です。

私がホンちゃんと出会ってから、もう半年以上経ちました。婦人会のリーダーである彼女のお母さんにインタビューした時、聞き取れなかった単語をノートに書いてくれたのが彼女です。勉強と仕事を両立させている優等生のホンちゃんの一日を追ってみました。

水上生活者の子どもがどのような一日を過ごしているのか分かりやすいように表にして見ました。文字で書くと以下の通 りです。
6時
起床
12時〜17時
ゴミ拾いの仕事
6時〜6時半
朝食
17時〜18時
友達と遊ぶ
6時半〜10時半
学校
18時〜18時半
夕食
10時半〜11時半
友達と遊ぶ
18時半〜20時
宿題
11時半〜12時
昼食
20時
就寝
これは、インタビューをもとに作成しました

★家族と仕事

4人兄弟のホンちゃん。お兄さんはホーチミン市に出稼ぎに行っているので、姉と弟、両親、祖父母と7人暮らしをしています。生まれたときからずっと、3畳ほどの 船の上での生活です。

お父さんの仕事はシクロの運転手。ホンちゃんは、お母さんとおばあちゃんと一緒にゴミ集めをしています。ゴミ集めといっても、日本で言うゴミ収集の仕事とは少し違います。一般 家庭や市場、工場からでるゴミの中からお金になるものを集めて、1キロ当たり2,000ドン(約15円)程度に換金してもらうのです。そのため、ホンちゃんの船の前にはいつも、ビニール袋が干してあり、「お金になるゴミ」があふれています。

ゴミ集めには一人で行くこともありますが、近所の友達と行ったり、お母さんやおばあちゃんと行くことの方が多いです。そして、フエの街中を隅から隅まで歩いて、ゴミを探します。歩くコースはその日によって違うけれど、7キロ先にある市場まで足 を伸ばすこともあります。5時間も歩き続けて疲れないの?と聞くと、「疲れたら休むし、友達と行くときは歌いながら歩いたりして楽しい」という元気な答えがかえってきました。友達とのごみ集めは、「遊びながら仕事をしているようなもの」なのだそうです。

お祖母ちゃんと行くときは、昼間に宿題をして、夕方5時から仕事に出かけます。帰ってくるのは夜10時半。10時に終る水産加工工場でゴミを集めるためです。臭くて危険なゴミ集めの仕事。感染症にかかる危険性もあります。それでも、家族が食 べていけるように、そして学費を貯めるためにこの仕事を続けなければなりません。 ゴミ集めの仕事でホンちゃんが得られる収入は一日5〜6,000ドン(約40円)。少ないけれど、一家の暮らしを支える大切な収入なのです。

手伝い、お小遣い

仕事で疲れて帰ってくるお母さんのために、ホンちゃんはたくさんお手伝いをします。(ベトナムの家庭では、よく女の子が家の手伝いをします。)お皿洗い、洗濯など。蒔きでご飯を炊くこともできます。船の上での生活ですが、台所は蒔きなのです。

昼と夜は家族と食べますが、朝食は船着場の前の路上に出てい る屋台で一杯1,500ドン(約10円)のうどんを食べます。このお金は毎日もらうお小遣いの2,000ドン(約15円)の中から出します。そして、放課後、残りの500ドンでお菓子を買います。

学校


ホンちゃんはこの9月から5年生になりました。水上生活者の場合、4〜6年生で休学してしまう子どもが多いのですが、家族の協力もあり、彼女は勉強を続けることができています。

学校の授業は朝7時から始まります。(ベトナムでは二部制の学校がほとんどで、午前と午後のクラスに分かれます。)授業は1日4〜5科目、月曜日から土曜日までの週6日です。「今日は、図工で刺繍を習って、面 白かった。」と話してくれたホン ちゃん。彼女はクラスで5人選ばれる優等生(Hoc Sinh Suat Sac)の一人です。優等生は賞状をもらうことができるのですが、船には4枚の賞状が飾られています。つまり1年生から4年生まで、ずっと優等生に選ばれてきたのです。

勉強が大好きなホンちゃん。できれば大学まで進みたいと小さな声で話してくれまし た。しかし、水上生活者で大学までいった人は数人しかいません。学力の問題だけで なく学費の高い大学に子どもをやることは、安定した所得がある家庭でも難しいことなのです。ここ数年、学費の値上がりが続いているため、ホンちゃんのご両親も、 学費の問題を一番心配していました。


将来どんな仕事をしたい?という私の質問に、ホンちゃんは迷わず、「お兄さんのよ うに、ホーチミン市で洋服を縫う仕事がしたい」と答えてくれました。恥ずかしがり屋で優しいホンちゃんが、大都会ホーチミンで暮らしていけるか不安ですが、夢を実現できるよう心から願っています。

9月の行事 中秋

陰暦の9月15日は中秋です。子どもたちにとって、中秋は待ちに待った大イベン ト。数週間前から獅子舞と太鼓の練習をして、当日は夜遅くまで街を練り歩きます。(獅子舞を踊ることができるのは男の子だけ。)フエでは、中秋はたいてい雨なのですが、雨などものともせず、彼らは踊り続けます。そして、もらったお捻りで、お菓子を買って皆で食べるのです。月餅や中国製のおもちゃも街でたくさん見かけるよう になるため、中秋は、中国文化の影響の強さ感じる伝統行事の一つとも言えます。

フエ市のイベントに招かれた
豪華な獅子舞チーム

ホームステイ先の
ミニ獅子舞たち

古関 陽子 y_koseki@hotmail.com