ベトナム便り〜2004年9月〜

船上の子どもたち

みなさん、初めまして。ベトナム中部にある古都フエからの便りです。私は、この町で、青年海外協力隊の村落開発普及員として、水上生活者(船上で暮らす貧困層)の生活実態およびニーズ調査をしています。この町に住み始めてから、ちょうど一年が経ちました。たくさんの人に出会い、助けられ、共に学び合い、この町が自分にとって“特別 な町”になっていくことを日々感じています。

連載のお話しをいただいたとき、「私にしか書けないテーマで、ベトナムの“いま”を伝えたい」と思いました。私はこの町で、ホームステイをしながら、ベトナム語でベトナム人の同僚と働いています。

地元の人と変わらない外見で、町じゅうを自転車で走り回り、船上で水上生活者と対話する毎日です。そこで、私の活動対象である、船上で暮らす貧困層の子どもたちをテーマに、彼らの暮らしぶりをお伝えすることにしました。

私の文章を読んで、子どもたちに対し“哀れみの気持ち”を抱くのではなく、“厳しい環境の中でも生き抜く強さ”を感じていただければ幸いです。

と言うわけで、来月号から毎月一人ずつ、水上生活者の子どもの暮らしぶりを紹介していきます。元気な笑顔の写 真付きで。今月は、『予備知識編』ということで、水上生活者について大まかに説明します。

水上生活者の歴史

水上生活者とは、その名の通り、船の上で暮らす人々です。現在、約7,000人が市の中心部を流れるフォン川とその支流で暮らしています。水上生活者の起源は、18世紀のグエン王朝時代にまでさかのぼります。当時の水上生活者は、船上での仕事(漁業、運搬業など)をしながら、移動生活をしていました。

しかし、これらの仕事 は、収入が低く不安定な上に、川の汚染や陸路の整備が進んだことで仕事が減少し、水上生活者の生活は困窮を極めました。そして、陸上で暮らす資金もない彼らは、最貧困層として水上にコミュニティーを形成せざるを得なくなったのです。

行政側は、20年以上にわたり、彼らを陸上に移住させ、生活を安定させる定住化政策を進めてきましたが、財政難や土地不足など、様々な理由で政策は難航しています。定住化を望んでいるのは行政側だけでなく、水上生活者自身も、台風や洪水の危険性、年々深刻化する水質汚染などに悩まされ、その約9割が定住化を希望しています。

仕事と教育


水上生活者の約6割は、今もなお、船上での仕事をしています。砂利採取、漁業、観光船の運営などが主な仕事です。しかし、これらの仕事は減少傾向にあるため、ここ数年、陸上で仕事をする人が増えてきました。陸上の仕事には、シクロ(人力車)の運転手、工事現場や市場での日雇い、ゴミ集めなどがあります。これらの仕事の収入は決してよくありません。何とかその日暮らしができる程度です。しかし、教育をほとんど受けていない彼らに、他に仕事はないのです。こういった仕事をしているのは大人だけではありません。子どもも、10代前半で家族にとって大切な働き手となります。そして、学校は、「学費を払うことができない」「家族の仕事の手伝い」などを理由に、休学してしまうのです。中学・高校に上がることができる子どもはほんの一握りです。

識字教室

休学した子どもの多くは、昼間は働き、夜は識字教室に通 っています。識字教室は、各地区にあり、援助団体の支援の下で運営されています。しかし、この識字教室も、最近、次々と閉鎖の危機に直面 しています。

理由は様々で、「学びたい生徒はたくさんいるのに、教師が忙しくて、教えることができない。」「ボランティアの教師はたくさんいるのに、生徒が昼間の仕事で疲れてしまって、教室に来ない。」などなど……。私は、識字教室でも活動しているので、その様子も追ってお伝えします。

何だか長文になってしまいました。水上生活者について、ベトナムの子どもたちについて、まだまだ分からないことがたくさんあるかと思いますが、これから少しずつお伝えしていくので、お楽しみに。皆さん(特に同年代の子どもたち)からのお便りをお待ちしています。

古関 陽子 y_koseki@hotmail.com