毎年12月に全力投球してしまう出版社は1月にはあまり新刊を出しません。
特に絵本は出版点数が少なく(出版社によっては1冊も出版されないところもある)その分2月には活発になります。いつものことながら『ハリ−・ポッター』が映画になり、見に行った人もたくさんいます。『ハリ−・ポッター』は本より映像向きな作品なので意にたがわず楽しめます。ところでその上映の時に次の『指輪物語』の映画のCMを見て、たくさんの人が読みたいと来店されるのですが、版元である評論社の体制が追いつかず、手に入りにくい状態です。ただ、『指輪物語』にはその前の物語として『ホビットの冒険』があるのを知らないですぐに『指輪物語』から読み始めて第1巻の半分ほどで投げ出してしまう人がいます。というのは、そこまで長々と状況が語られるため、『ハリ−・ポッター』の世界のように思って飛びついた人たちは、退屈でとてもとても 我慢が出来ないのかも知れません。『指輪物語』が『ハリ−・ポッター』と全然違うのは作品に流れている時間が違うのです。しかも主人公は決して英雄ではない。でも『ホビットの冒険』や第1巻の半分ぐらい読むとこの物語の世界が目に見えるようになり、おもしろいこと充分に保証します。ちなみに会留府はあて字ですが、この物語からもらった、それくらい私の大好きな本なのです。
★祝福される赤ちゃん。本当はみんながとても生まれるのを楽しみに待って、そして誕生するのですが、そんな嬉しい気持ちいっぱいの絵本です。
あかちゃんのゆりかご
レベッカ・ボンド 作
さくまゆみこ 訳
偕成社:本体1400円

生まれてくる赤ちゃんのためにみんなでゆりかごを作ります。
各々素敵に見えるように工夫したり飾ったりします。
とても嬉しい気持ちが良く描かれています。
それにゆりかごの中が見えるように描いたのか、構図が立体的でおもしろい絵本です。


しりとり りりぃ
なぞなぞ ぞうくん

フジイ・フランソワ 作・絵
偕成社:本体各1000円

なぞなぞとしりとりの絵本です。
絵も含めて、うんと元気にばかばかしいくらい陽気なストーリー仕立てになっていて、こういう本は友達と大声で読み合った方がおもしろい。

先日小林豊さんの講演会の中でも話されていました。戦争のこと、戦争の中の子どもたちのこと、確かにいつでも子どもたちが真っ先に傷つきます。これからの未来を戦争はメチャメチャにしてしまいます。
この2冊の本はその戦争の中でケガをしてしまった子どもの話です。でもこの作品にいる子どもは恐怖と悲しみに傷つきながらも自分を取り戻して行くのです。また一方では決して戦いだけでない生活があり、それだからこそ平和が大切なのだと考えます。
六号病室のなかまたち
ダニエラ・カルミ 作
樋口範子 訳
さ・え・ら書房:本体1300円

少年サミールは弟をイスラエル兵に殺され、生まれたときからパレスチナ・アラブ人として、イスラエルへの憎悪の中で育ちます。
そして膝のケガのため、入院した病院で手術することになり、不安と恐れのために追いつめられていきます。けれど同じ病室のイスラエルの子どもたちと月・日を共にするにつれ、少しずつ彼らとの間に友情が芽生えてきます。
ヨナタンとの火星探検、最後にはイスラエル兵を兄に持つツァヒとも笑い合えるようになります。
“ぼく自身が元のサミールから少し変わったのだと思う”戦争はなくなったわけではないけれど、サミールはそう思うのでした。
10才ぐらいから。

炎の秘密
ヘニング・マンケル作
オスターグレン晴子 訳
講談社:本体1500円
アフリカのモザンビーク、少女ソフィアは元気な女の子、父を内線で殺され姉マリアと弟と母親と放浪の末、やっとある村に落ち着きます。
かつて父親が買ってくれた一枚の白いドレス、そのドレスを姉に着せたくて縫うことを習い、それはやがて地雷で両足を失うことになるソフィアの生きる道しるべになるのでした。
作者は最初の作品『少年のはるかな海』でスウェーデンの街に生きている人たちの孤独と再生を少年の目を通 して書いていて、この本も決して暗くはなく、静かな深い感動を与えるのはソフィアの成長の物語だからだと思います。
花岡道子の画もとても良い。12才ぐらいから。
冒険小説、ドキドキ・ハラハラさせられるがこの物語には実在の人物が出てきます。
でも、歴史小説ではなく冒険小説なのはこの物語は自分探しの物語であるから。
ライディング・フリーダム
パム・M・ライアン作
こだまともこ訳
ポプラ社:本体1300円
1800年代アメリカでシャーロット・ダーギー・パークハーストという人がいました。
12才で孤児院を脱走して、男装して御者になり、孤児院にいたときに約束した牧場を持つという夢に向かって生きていった人でした。
1868年、まだ女性に選挙権はなく、男としてですが、女性で初めて選挙をした人とのことです。
片目を事故で失いながらも、夢を持つということはこんなにも人を強くさせるものでしょうか


シェイクスピアを代筆せよ!
ゲアリー・ブラックウッド著
安達まみ 訳
白水社:本体1800円
速記術を身につけたためにある事件に巻き込まれたウィッジ少年は宮内大臣一座の役者になるまでが前作『シェイクスピアを盗め!』の物語でした。
続けて17世紀初めのイギリスを舞台に物語は繰り広げられます。
1602年の夏、ロンドンでペストが再発したため劇場は閉められ、役者たちは旅回りをすることになります。もちろんシェイクスピアも引き続いて登場、シェイクスピアは役者であり、座付き作者、株主でもあり、ビジネスマンとしても成功したとのこと、その他たくさんの実在した人たちが登場、とても楽しい冒険小説のような趣です。
この本を機会にシェイクスピアの本を読んだり、芝居を見に行くことが出来たら、それに勝ることはありません。12才ぐらいから。
★その他の作品から
ほこらの神さま
富安陽子 作
偕成社:本体1000円
今回登場するのは小学5年生の男の子3人組、壊されたお屋敷の跡から小さな「ほこら」を拾ってきて秘密基地に隠しました。
神さまが住んでいて、願い事も叶いそうなのだけれど、何故かそれだけではすみません。
あの不思議な忘れられない5月の出来事。地図つきです。10才ぐらいから。
月冠の巫王
たつみや章 作
講談社:本体1600円
時代は縄文と弥生、『月神の統べる森で』で始まった長編物語もこの4部作で完結。
このシリーズは表紙の絵などが内容にそぐわないから、古代歴史小説にはとても思えず、実際は日本古代の神話的物語をしっかり柱にして、とても読みごたえのある作品になっているのです。
最後のこの本は少し早足になってしまったきらいがありますが、作者の持つ、日本の子どもたちに日本の文化から生み出された物語をプレゼントしたいという願いは十分伝わると思います。
これからも期待したい。12才ぐらいから。

★福音館書店〜限定出版のお知らせ〜★
かあさんねずみがおかゆをつくった
ヘレナ・ズマートリーコバー絵
いでひろこ 訳
福音館書店
本体:1000円
まどのそとのそのまたむこう
モーリス・センダック 作/絵
わきあきこ 訳
福音館書店
本体:2000円
カーニバルのおくりもの
レミィ・シャーリップ
バートン・サブリー/作・絵
うちだりさこ 訳
福音館書店
本体:1100円
ママ、ママ、おなかがいたいよ
レミィ・シャーリップ
バートン・サブリー/作・絵
つぼいいくみ 訳
福音館書店
本体:1300円
リンドグレーン、そして日本ではいぬいとみこ、上野瞭さんと亡くなられました。
リンドグレーンは94歳なのですが、いぬい、上野さんは共にまだ70代、時代は変わったとつくづく思った事でした。いつか取り上げてみようと思っています。

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